マレーシア当局、5G周波数を割当もすぐに取り消し

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マレーシア政府は第5世代移動通信システム(5G)向け周波数の割当を発表したが、すぐに割当を撤回すると発表した。

マレーシアの通信マルチメディア大臣は2020年5月15日付けの大臣指令で通信マルチメディア省(Ministry of Communications and Multimedia)傘下のマレーシア通信マルチメディア委員会(Malaysian Communications and Multimedia Commission：MCMC)に対して5G向け周波数として700MHz帯の割当を命じていた。

大臣指令では割当先も指定しており、それに基づきマレーシア通信マルチメディア委員会はAltel Communicationsに対して713～718MHzおよび768～773MHzの5MHz幅*2、Celcom Axiataに対して723～733MHzおよび778～788MHzの10MHz幅*2、Digi Telecommunicationsに対して703～713MHzおよび758～768MHzの10MHz幅*2、Maxis Broadbandに対して733～743MHzおよび788～798MHzの10MHz幅*2、Telekom Malaysiaに対して718～723MHzおよび773～778MHzの5MHz幅*2を割当することになった。

5G向け周波数として確保した周波数となるが、5GのNR方式以外も導入を可能としており、ダイナミックスペクトラムシェアリング(DSS)を実装して第4世代移動通信システム(4G)のLTE方式とNR方式の運用を認めていた。

なお、割当対象の700MHz帯はすべてLTE方式ではBand 28、NR方式ではn28を導入できる。

しかし、5G向け周波数の割当の過程に関して疑問視する意見が出ており、割当の決定からわずか半月程度の2020年6月3日付けで通信マルチメディア大臣が自ら5G向け周波数の割当を撤回した。

これまでに、周波数の割当などを担当するマレーシア通信マルチメディア委員会は2020年1月1日付けで5G向け周波数の割当に関する概要を発表しており、第1段階では700MHz帯の30MHz幅*2と3.5GHz帯の100MHz幅をパッケージとして入札で選定した1の事業体に割当する方針を示していた。

5Gでは設備投資を軽減するために通信設備の共用を促進する方針から、各社個別に周波数を割当するのではなく、既存の移動体通信事業者(MNO)を含めた複数社が結成した1のコンソーシアムに5G向け周波数を割当する方針を固めていた。

すでに5G向け周波数の割当手順の概要を公表していたにもかかわらず、入札を実施せずに通信マルチメディア大臣が直接割当を指示した点は不可解とされている。

また、当初の内容ではマレーシアの既存の移動体通信事業者であるU Mobile、webe digital、YTL Communicationsには5G向け周波数の割当が見送られた。

webe digitalはTelekom Malaysiaの子会社でTelekom Malaysia向けに割当された周波数も使用するため、U MobileおよびYTL Communicationsと事情は異なるが、U MobileとYTL Communicationsは当初の内容であれば5G向け周波数を確保できないことになる。

実業家のサイド・モフタル・アルブハリーが所有するマレーシアのPuncak Semangatの子会社であるAltel Communicationsが5G向け周波数の割当を受けたことはさらに深刻な問題と言える。

サイド・モフタル・アルブハリーはマレーシア政府と緊密な関係で、そのような立場を生かしてマレーシア政府から移動体通信分野を含む様々な分野で免許を取得して事業を拡大してきたが、この過程には批判も少なくない。

移動体通信分野ではAltel CommunicationsがLTE方式を導入できる2.6GHz帯の割当を受けたが、自らネットワークを構築する当初の計画を諦め、既存の移動体通信事業者であるCelcom AxiataとDigi Telecommunicationsに周波数を貸し出し、Altel Communicationsは仮想移動体通信事業者(MVNO)として展開するにとどまる。

既存の移動体通信事業者に5G向け周波数を割当せずに、過去に周波数の割当を受けながら有効活用できていない企業に5G向け周波数を割当した点は問題視されても仕方がない。

マレーシア通信マルチメディア委員会