iPad mini(第6世代)は米国版もミリ波5Gに非対応、Verizonも許容

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米国(アメリカ)のAppleが発表したタブレット「iPad mini(第6世代)」は米国向けのWi-Fi + Cellularモデルもミリ波(mmWave)の周波数を使用した第5世代移動通信システム(5G)に非対応となることが分かった。

iPad mini(第6世代)にはモバイルネットワークに対応したWi-Fi + Cellularモデルとモバイルネットワークに非対応のWi-Fiモデルを用意しており、Wi-Fi + Cellularモデルは5Gを利用できる。

Wi-Fi + Cellularモデルの型番はA2568の1種類となっている。

これまで、iPhoneおよびiPadを含めた5Gに対応したAppleの製品のうち米国で販売する型番はすべてミリ波の5Gにも対応してきた。

A2568はサブ6GHz帯の5Gには対応しているが、ミリ波の5Gには非対応となるため、米国で販売するiPad mini(第6世代)のWi-Fi + Cellularモデルは米国でもミリ波の5Gを利用できない。

5Gに対応したAppleの製品がミリ波の5Gにも対応してきた背景として、加入件数を基準に米国で最大の移動体通信事業者(MNO)でVerizon Wirelessとして事業を行うCellco Partnershipの要求が考えられる。

Cellco PartnershipがVerizon Wirelessの携帯通信サービスで提供する5Gには5G Ultra Widebandおよび5G Nationwideが存在する。

2019年4月3日に世界初のNR方式に準拠した5Gの商用化と同時に提供を開始した5G Ultra Widebandは提供エリアが選択された一部の都市の中心部と限定的であるが、最大で800MHz幅と広い帯域幅を確保したミリ波の周波数を使用し、理論値で下りの通信速度が4Gbpsに達する高速通信を提供できる。

2020年10月13日に提供を開始した5G Nationwideは提供エリアが全米で2,700以上の都市と広範であるが、帯域幅が狭い第4世代移動通信システム(4G)と同一の周波数を使用し、4GのLTE方式と5GのNR方式で動的に周波数を共有するダイナミックスペクトラムシェアリング(DSS)を実装しているため、5Gでも通信速度は4Gと同等にとどまる。

Verizon Wirelessでは5G Ultra Widebandを約1年半も先行して導入したほか、5Gで高速通信を実現するためには5G Ultra Wideband、すなわちミリ波に対応する必要があるため、Appleを含めてVerizon Wirelessのラインナップで販売する5Gに対応した製品はすべてミリ波に対応してきた経緯がある。

しかし、米国では周波数事情が変化しており、Cellco Partnershipは新たに5G向け周波数としてC-bandと呼称されるサブ6GHz帯の3.7GHz帯を確保した。

3.7GHz帯は地域によって140MHz幅から200MHz幅、平均では161MHz幅の帯域幅を確保しており、ミリ波には及ばないが、高速通信を実現できる。

Cellco Partnershipは高速通信を提供できる3.7GHz帯でもミリ波と同様に5G Ultra Widebandとして提供することに決定した。

その結果、5G Nationwideは通信速度が4Gと同等かつ広範なカバレッジの5Gで従来と意味は変わらないが、5G Ultra Widebandは5G向けに取得した広い帯域幅の3.7GHz帯またはミリ波の周波数で高速通信を実現する5Gを意味することになった。

Verizon Wirelessのラインナップで販売する5Gに対応した製品には引き続き5G Ultra Widebandに対応するよう要求するが、必ずしもミリ波である必要はなく、Cellco Partnershipはミリ波に非対応でも許容する方針と思われる。

そのため、iPad mini(第6世代)のWi-Fi + Cellularモデルはミリ波に対応することは義務ではなくなり、設計や価格などを総合的に考慮してミリ波は非対応にしたと考えられる。

なお、Verizon Wirelessでは2021年12月に3.7GHz帯を使用した5G Ultra Widebandの提供を開始する予定である。