CHEO Technologyの2021年通期の業績が判明、北朝鮮のkoryolinkを運営
- 2022年08月30日
- DPRK
朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の移動体通信事業者(MNO)であるCHEO Technology JV Company (逓オ技術合作会社)の2021年通期の業績が判明した。
2021年12月31日に終了した12か月間となる2021年通期の売上高は前年同期比7.54%減の58億7,388万4,000エジプトポンド(約424億2,518万円)、総経費は前年同期比92.58%増の53億643万6,000エジプトポンド(約382億4,837万円)、当期純利益は前年同期比84.23%減の5億6,744万8,000エジプトポンド(約40億9,012万円)となった。
北朝鮮の国営の移動体通信事業者であるKorea Posts and Telecommunications Corporation (朝鮮逓信会社:KPTC)が開設した携帯通信網への移行、短期滞在もしくは中長期滞在の訪朝者をはじめとするインターネットや国際通信を利用できる加入者の減少、総経費の増大などが減収減益の主な要因として考えられる。
CHEO Technology JV CompanyはエジプトのOrascom Investment Holding (OIH)とKorea Posts and Telecommunications Corporationが共同で出資し、Korea Posts and Telecommunications Corporationが運営を担う合作会社である。
議決権の持分比率はOrascom Investment Holdingが75%、Korea Posts and Telecommunications Corporationが25%であるため、2021年通期のOrascom Investment Holdingに対する分配額は前年同期比84.23%減の4億2,558万6,000エジプトポンド(約30億6,831万円)となる。
Orascom Investment Holdingの持分比率が過半を上回るが、Orascom Investment HoldingはCHEO Technology JV Companyを関連会社として扱う。
また、2021年12月31日時点でCHEO Technology JV Companyの総資産は前年同期比59.49%減の140億351万4,000エジプトポンド(約1,009億6,005万円)、総負債は前年同期比65.42%減の15億3,217万7,000エジプトポンド(約110億4,762万円)、純資産は前年同期比58.62%減の124億7,133万7,000エジプトポンド(約899億2,341万円)となった。
Orascom Investment HoldingのCHEO Technology JV Companyに対する投資額の期首残高は前年同期比27.60%増の124億7,276万エジプトポンド(約899億2,571万円)、期末残高は前年同期比3.41%増の128億9,834万6,000エジプトポンド(約929億9,357万円)であるが、それぞれ118億7,133万8,000エジプトポンド(約854億6,689万円)と122億8,471万4,000エジプトポンド(約885億3,403万円)、2021年通期のOrascom Investment Holdingに対する分配額の全額を減損計上した。
そのため、2021年12月31日を基準にOrascom Investment HoldingはCHEO Technology JV Companyで6億1,363万2,000エジプトポンド(約44億2,345万円)の権益を保有する。
CHEO Technology JV Companyは登記上の本店所在地が北朝鮮の首都・平壌市の平川区域に所在する普通江旅館(POTONGGANG HOTEL)内の事務所で、平壌市の普通江区域に所在する国際通信局(INTERNATIONAL COMMUNICATION CENTRE)に主要な業務拠点を設置している。
国際連合安全保障理事会(United Nations Security Council)が2017年9月11日に全会一致で採択した決議第2375号(2017)に基づき、原則として北朝鮮の事業体や個人と構成した既存の合弁事業は解消する必要があるが、Orascom Investment HoldingはCHEO Technology JV Companyに関して免除の申請を提出した。
国際連合安全保障理事会の1718委員会はCHEO Technology JV Companyの事業を公益事業と判断し、2018年12月26日付けで正式に免除の対象として承認したため、Orascom Investment HoldingはKorea Posts and Telecommunications CorporationとCHEO Technology JV Companyの事業を継続できる。
CHEO Technology JV Companyの主要事業は北朝鮮における携帯通信事業で、koryolink (高麗リンク)として携帯通信事業を展開しているが、koryolinkのほかに朝鮮語で高麗網を意味する고려망や携帯電話番号帯に由来する191の呼称も定着している。
Korea Posts and Telecommunications Corporationは北朝鮮の政府機関で電気通信行政などを担う情報産業省(Ministry of Information and Communications Technology Industry:MICTI)が完全所有しており、KANGSONG NET (強盛網)としてkoryolinkとは異なる携帯通信事業も展開する。
koryolinkの整備は主要都市とその近郊に集中し、地方都市ではKANGSONG NETを新規に整備もしくはkoryolinkからKANGSONG NETに切り替えているため、CHEO Technology JV Companyの事業規模は縮小傾向で業績にも反映されている。
koryolinkおよびKANGSONG NETは第3世代移動通信システム(3G)のW-CDMA方式を採用しており、周波数は2.1GHz帯(Band I)を使用して携帯通信網を整備している。
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