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iPhone 14シリーズの衛星通信、Globalstar移動衛星業務のLバンドとSバンドを使用か



米国(アメリカ)のAppleが発表したスマートフォン「iPhone 14」、「iPhone 14 Plus」、「iPhone 14 Pro」、「iPhone 14 Pro Max」は衛星経由で緊急連絡を行える機能を実装した。

衛星通信で利用できる機能は限定的であるが、地上の携帯通信網が圏外の場合などほかの連絡手段を利用できない例外的な状況下では衛星経由で緊急機関にメッセージを送信できる。

2022年11月に提供するソフトウェアのアップデートを通じて対応する予定で、米国およびカナダで利用できるようになる。

ただ、米国のアラスカ州北部やカナダの北部など緯度が北緯62度を超える場所では機能しない場合があるという。

米国の海外領土としては米自治領プエルトルコおよび米領バージン諸島(USVI)では利用できるが、米領グアムおよび米領サモア(アメリカン・サモア)では利用できないことを明確化している。

特に言及がない米自治領北マリアナ諸島自治連邦区(CNMI)や米領有小離島もグアムおよびアメリカン・サモアと同様に利用できないと思われる。

米国やカナダを訪問する国際的な旅行者は中国大陸、香港特別行政区、マカオ特別行政区で購入した製品以外では利用できると案内しているため、日本で購入した製品でも米国やカナダで利用できることが分かる。

衛星通信は米国のGlobalstarが提供することが正式に発表されている。

Globalstarは衛星通信に対応する携帯通信技術を利用できるApple製品にはGlobalstarが標準化を推進したLTE方式のB53およびNR方式のn53を実装するよう求めているが、衛星経由の緊急連絡ではB53およびn53を使用しない模様である。

なお、LTE方式は第4世代移動通信システム(4G)、NR方式は第5世代移動通信システム(5G)の無線方式で、B53およびn53の周波数範囲はTDDの2483.5~2495MHzとなる。

Globalstarが移動衛星業務(Mobile Satellite Service:MSS)で使用する周波数のひとつであるSバンドの2.4GHz帯で携帯通信技術を導入できるよう標準化団体の3GPP (3rd Generation Partnership Project)でバンドを新規に定義した。

これまでに、iPhone 14シリーズの複数の型番が米国の政府機関である連邦通信委員会(Federal Communications Commission:FCC)の認証を通過しており、FCCで公開した資料ではアップリンクで1610~1626.5MHzのLバンド、ダウンリンクで2483.5~2500MHzのSバンドを使用したMSSに対応すると明記している。

FCCでは端末の場合は米国で利用できるアップリンクの周波数で認証を受ける必要があり、実際に1610~1626.5MHzで認証を受けている。

GlobalstarのMSSはアップリンクで1610~1618.725MHz、ダウンリンクで2483.5~2500MHzの周波数を使用するため、iPhone 14シリーズはGlobalstarのMSSに対応して衛星と直接通信すると考えられる。

Globalstarは衛星通信に対応する携帯通信技術を利用できるApple製品にはB53およびn53に対応するよう要求しているが、衛星通信と地上通信の両方で使用するためにAppleはB53およびn53を有効にすると背景を説明している。

低軌道上の人工衛星から携帯通信網を構築する技術の開発は各社が進めており、Globalstarも検討していると思われるが、当面は米国のワシントン州シアトル市のシアトル港で構築したB53のプライベートネットワークのようにB53およびn53は地上での展開を想定している模様である。

B53およびn53に対応した商用の端末はiPhone 14シリーズ以外に製品化されていないため、Globalstarとしては衛星通信を提供する条件にB53およびn53への対応を付して、B53およびn53の普及と地上業務の拡大を図ると思われる。

日本ではGlobalstarの周波数を使用した3GPP準拠の携帯通信技術は無線設備の技術基準を定めておらず、特定無線設備として規定していないため、日本で利用する場合は総務省(Ministry of Internal Affairs and Communications)で制度整備が必要となる。

一方、GlobalstarのMSSは無線設備の技術基準を定めているため、特定無線設備として規定して技術基準適合証明(技適)などの対象で、端末は証明規則第2条第28号の2の3に規定する特定無線設備の1.6GHz帯/2.4GHz帯移動衛星通信システム用携帯移動地球局に該当する。

iPhone 14シリーズが証明規則第2条第28号の2の3に規定する特定無線設備で工事設計認証を取得した場合は日本でも電波法上はMSSを利用できることになる。

工事設計認証は発売前に取得しているが、工事設計認証の情報は発売後に総務省が掲載すると思われる。

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