クリミア共和国政府、国有携帯電話事業者Krymtelecomを制裁対象者に売却
- 2018年12月26日
- 海外携帯電話
ロシアが実効支配するクリミア共和国の移動体通信事業者(MNO)であるKrymtelecomは民営化を完了した。
ロシアがクリミア半島のクリミア共和国およびセヴァストポリ連邦市を編入後、ウクライナの企業はクリミア半島から撤退しており、ウクライナのUkrtelecomおよびKyivstarも例外ではない。
ロシアがクリミア半島を編入してから、クリミア共和国政府はKrymtelecomを設立し、UktelecomおよびKyivstarが残した施設や設備を利用して事業を展開してきた。
クリミア共和国政府はKrymtelecomの民営化に先立ち、2018年11月には会社形態を国家単一企業から株式会社に変更した。
会社形態の変更に伴い、正式な商号はState Unitary Enterprise «Krymtelecom»からJoint Stock Company «Krymtelecom»となった。
ロシア連邦民法第58条第5項に従い、Joint Stock Company «Krymtelecom»はState Unitary Enterprise «Krymtelecom»の法的後継者であり、Joint Stock Company «Krymtelecom»はState Unitary Enterprise «Krymtelecom»のすべての権利と義務を継承する。
クリミア共和国政府は入札で売却先を決定し、クリミア共和国の首都・シンフェロポリ市に本社を置くInfrastructure Projects Management Company (UKIP)がKrymtelecomの全株式を9億9,800万ロシアルーブル(約16億134万円)で取得した。
Infrastructure Projects Management Companyは2018年11月に米国の政府機関である財務省(Department of the Treasury)傘下の外国資産管理局(Office of Foreign Asset Control:OFAC)より米国人との取引禁止および米国内の資産凍結を講じる制裁対象者に指定された。
日米を含む国際的にはロシアによるクリミア半島の編入は承認されておらず、制裁措置の内容こそ異なるが、日本政府も米国政府もクリミア半島の編入に係る制裁措置を発動している。
ウクライナの企業が所有していた多くの事業体や資産はクリミア半島の編入に伴ってロシア政府当局またはロシア政府の支配下にあるクリミア半島当局が接収し、事実上のロシア国有化が行われた。
また、ロシア政府当局またはクリミア半島当局が接収した事業体や資産をウクライナ政府の承認なしで売却することは違法とみなされている。
クリミア半島当局が接収した3社の療養所の民営化に際して、Infrastructure Projects Management Companyはウクライナ政府の承認なしでクリミア半島当局より取得しており、これを理由に外国資産管理局はInfrastructure Projects Management Companyと3社の療養所をまとめて制裁対象に指定した。
内容的にKrymtelecomの取得も療養所の取得と同じ性質であり、Krymtelecomの取得も米国政府は問題視すると思われる。
制裁対象者が所有する事業体なども制裁対象者と同一視される場合があり、KrymtelecomおよびKrymtelecomと共同事業を行う事業体なども制裁対象に指定される可能性がある。
なお、Krymtelecomはクリミア共和国が所有していた経緯から、セヴァストポリ連邦市は事業範囲としていない。
セヴァストポリ連邦市ではセヴァストポリ連邦市政府が出資するSevastopol TelecomおよびSevastopol TelecomとロシアのHolding Progressの合弁会社であるSevTelekomSvyazが事業を展開する。
Sevastopol TelecomとSevTelekomSvyazもKrymtelecomと同様にUkrtelecomおよびKyivstarが残した資産を利用しており、移動体通信事業ではKrymtelecomとSevTelekomSvyazは相互にローミングを受け入れている。
スポンサーリンク
コメントを残す
コメントを投稿するにはログインしてください。