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5Gでアンテナピクトの表示はどうなるか



NTT DOCOMOは第5世代移動通信システム(5G)の商用サービスの開始に先立ち5Gプレサービスを開始した。

5Gプレサービス向けに韓国のSamsung Electronics (サムスン電子)が開発した試作機のアンテナピクトには2種類の5G表示が存在する。

韓国でSamsung Galaxy S10 5Gが発売された際にも5Gのアンテナピクトに関して言及したが、この機会に改めて執筆してみる。

NTT DOCOMOの5Gプレサービスでは標準化団体の3GPP (3rd Generation Partnership Project)で5Gの要求条件を満たすために規定した通信方式であるNRを導入している。

NRにはNRが単独で動作するスタンドアローン(SA)と、NRとLTEが連携して動作するノンスタンドアローン(NSA)が規定されているが、5GプレサービスではNSAで実装しており、5G商用サービスでもまずはNSAとなる。

3GPPでは構成がSAまたはNSA、コアネットワークがEPCまたは5GCなど、それぞれに応じてNRの収容に関する複数のRANアーキテクチャオプションが策定されており、NRの導入初期はNTT DOCOMOを含めてほとんどの移動体通信事業者(MNO)がLTEのEPCに収容するOption 3を採用する。

NSAのOption 3ではLTEを提供する基地局であるeNBがマスターノード、NRのNSA向けRANでNRを提供する基地局であるen-gNBがセカンダリノードとなる。

そのため、NRの接続にはLTEへの常時接続が前提となり、この常時接続するLTEがアンカーバンドと呼ばれる。

NRとLTEの同時通信を実現する技術がLTEとNRのデュアルコネクティビティ(E-UTRA-NR Dual Connectivity:EN-DC)で、EN-DCが動作時にNRを利用できる。

なお、アンカーバンドとして機能できるLTEについて、以下からeLTEと表記する。

Samsung Electronics製の試作機はeLTEのみでも5Gと表示する仕様で、これは韓国版のSamsung Galaxy S10 5Gと共通である。

EN-DCがアクティブでNRとeLTEが同時通信している場合と、eLTEのみの場合で異なる5G表示となり、図1のAパターンがNRとeLTEの同時通信、BパターンがeLTEのみとなる。



図1

Samsung ElectronicsはAパターンを「5G network connected」、Bパターンを「LTE network connected in LTE network that includes the 5G network」と案内している。

一方、5Gプレサービス向けにSony Mobile Communications製が開発した試作機では5G表示が1種類のみとなる模様で、それが図2のCパターンである。



図2

Sony Mobile Communications製の試作機ではSamsung Electronics製の試作機のAパターンおよびBパターンの状態でCパターンの表示となるため、Samsung Electronics製の試作機ではAパターンとBパターンの状態をアンテナピクトから区別できるが、Sony Mobile Communications製の試作機では区別できないことになる。

ただ、これは最終仕様ではない。

いずれも一般販売しない5Gプレサービス向けの試作機で、Samsung Electronics製の試作機は韓国版のSamsung Galaxy S10 5Gと同様の仕様であることからも分かるように、アンテナピクトの表示はメーカー側の仕様がそのまま反映されている。

NTT DOCOMOの製品としてNRに対応したスマートフォンを商品化する際は、NTT DOCOMOが決定した統一された表示規則をすべてのメーカーが実装する予定であると確認できている。

その統一された表示規則に関しては決定していない模様で、これから検討されると思われる。

NTT DOCOMOの型番が付与されたスマートフォンは長らくLTEに接続時のアンテナピクトがLTEに統一されていたが、2016-2017年冬春モデルからは新たな表示規則を採用しており、キャリアアグリゲーション(CA)に対応していれば4G+、CAに非対応であれば4Gで統一された。

このように、NTT DOCOMOは従来よりメーカーに関係なく統一されたアンテナピクトの表示規則を採用しているため、5G時代でも同様だろうとは容易に想像できる。

eLTEを含めてNR Phase 1が規定された3GPP Release 15以降に標準化された移動体通信技術は5Gの呼称が認められており、またNRとeLTEの組み合わせを5Gとする考え方もあることから、NRに対応したスマートフォンにおいてeLTEのみで5G表示を採用する考え方は理解できなくはない。

また、アイドル状態ではNRのカバレッジ内でもEN-DCがアクティブにならずeLTEのみとなるため、eLTEで5G表示にしないならば、利用者に5Gのエリアを実際より狭く感じさせる可能性がある。

Samsung Electronics製の試作機や韓国版のSamsung Galaxy S10 5GのようにAパターンとBパターンの状態で分ける場合、頻繁に2種類の表示が切り替わり、利用者に疎ましく感じさせる懸念もある。

一方、5Gの導入のために割当された周波数を使用し、5Gの要求条件を満たすために規定されたNRに接続していない状態で5G表示を採用することは、適切ではないとの考え方も十分に理解できる。

あくまでもLTEの発展形であるeLTEのみでも5G表示となれば、利用者の立場からは欺かれた気分になるかもしれない。

実際に韓国では問題になり、大手報道機関がeLTEのみで5G表示と表示する事象をフェイク5Gと報じ、韓国の政府機関である科学技術情報通信部(Ministry of Science and ICT:MSIT)がメーカーや移動体通信事業者と調整してアップデートにより是正した事例もある。

韓国の事例からも分かるように、5G表示に関しては5Gの解釈や立場によって様々な考え方がある。

万人が納得する表示規則こそ存在しないが、日本では5G商用サービスの開始までに適切な議論が行われることに期待したい。

筆者としてはNRとeLTEが同時通信している状態が明確になるような表示規則を採用してほしいと感じている。

なお、すでに流通している商用のNRに対応したスマートフォンにはSony Mobile Communications製の試作機と同様の表示規則を採用する機種も多いのが現状である。

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