台湾のNCC、遠傳電信と亞太電信の5G周波数共有を承認

Tweet

台湾の政府機関で電気通信分野などの規制を司る国家通訊伝播委員会(National Communications Commission：NCC)は台湾の移動体通信事業者(MNO)であるFar EasTone Telecommunications (遠傳電信)およびAsia Pacific Telecom (亞太電信)の間で合意した第5世代移動通信システム(5G)向け周波数の共有に関して承認したと発表した。

台湾では5G向け周波数として1.8GHz帯、3.5GHz帯、28GHz帯の割当が実施されたが、5Gの導入初期に広い帯域幅を使用して高速通信を実現できる3.5GHz帯は人気が集中したため、Asia Pacific Telecomは3.5GHz帯の取得を断念し、3.5GHz帯を取得した移動体通信事業者と提携する方向に切り替えた。

Asia Pacific Telecomは最終的にFar EasTone Telecommunicationsと3.5GHz帯の共有で合意に達し、20年間にわたり3.5GHz帯を共有することになった。

ただ、周波数の共有には国家通訊伝播委員会の承認が必要で、国家通訊伝播委員会はAsia Pacific TelecomおよびFar EasTone Telecommunicationsが実施する3.5GHz帯の共有に関して審査を実施したところ、周波数の使用効率を高めて移動体通信技術の発展などに貢献すると判断し、3.5GHz帯の共有を承認した。

3.5GHz帯の共有には条件が設定されており、Far EasTone TelecommunicationsおよびAsia Pacific Telecomが共同でネットワークの管理およびセキュリティの監督を担当する部門を設立し、定期的に会合を開催して運用報告書を提出するほか、従来の計画から開設する基地局を追加することが条件として規定された。

5Gの無線方式はNR方式を採用し、第4世代移動通信システム(4G)のLTE方式と連携して動作するノンスタンドアローン(NSA)構成で運用するため、基地局の追加にはLTE方式の基地局も対象に含まれており、追加で開設する基地局数はFar EasTone TelecommunicationsがNR方式の基地局を500局、LTE方式の基地局を1,000局、Asia Pacific TelecomがLTE方式の基地局を1,000局となっている。

なお、Far EasTone Telecommunicationsは2020年7月3日に5Gを商用化しており、周波数は5G向けの3.5GHz帯と4G向けの2.1GHz帯を使用し、5G向けの28GHz帯は使用を開始していない。

Asia Pacific Telecomは2020年10月22日に5Gを商用化しており、周波数は5G向けの3.5GHz帯および28GHz帯を使用するが、3.5GHz帯はFar EasTone Telecommunicationsが保有する周波数で、2020年10月22日の段階では共有の承認を取得していないため、Asia Pacific Telecomは仮想移動体通信事業者(MVNO)として3.5GHz帯を使用した5Gの提供を行う。

28GHz帯はAsia Pacific Telecomが5G向けに取得した周波数であるが、台湾では一般に流通する対応機種が存在しないため、Asia Pacific Telecomの店舗などに28GHz帯の5Gを活用した無線LANスポットを導入し、5Gの加入者に対して無線LANを経由して28GHz帯の5Gを提供する状況である。

Far EasTone TelecommunicationsおよびAsia Pacific Telecomは周波数に加えて無線アクセスネットワーク(RAN)も共有する計画で、無線アクセスネットワークの共有形態のひとつであるマルチオペレータコアネットワーク(MOCN)を実装する。

コアネットワークはそれぞれの移動体通信事業者で独立して存在するが、複数の移動体通信事業者のコアネットワークに直結する無線アクセスネットワークを共有することになる。

スウェーデンのEricssonが共有する無線アクセスネットワークを供給することも決定している。