HUAWEI P50シリーズは4Gで展開、Kirinは上位版限定に
- 2021年07月31日
- その他スマートフォン
中国のHuawei Technologies (華為技術)はスマートフォン「HUAWEI P50」および「HUAWEI P50 Pro」を発表した。
HUAWEI P50シリーズの2機種はフラッグシップのシリーズのひとつとなるHUAWEI Pシリーズで展開するスマートフォンである。
先代のHUAWEI P40シリーズでは第5世代移動通信システム(5G)に対応した5G版を発売してから5Gに非対応の4G版を発売したが、HUAWEI P50シリーズの2機種は最初から4G版となる。
また、HUAWEI P40シリーズではHuawei Technologiesの完全子会社で中国のHiSilicon Technologies (深圳市海思半導体)が開発したKirinシリーズのチップセットを採用したが、HUAWEI P50は米国のQualcommの完全子会社で米国のQualcomm Technologiesが開発したSnapdragonシリーズのチップセット、HUAWEI P50 ProはKirinシリーズとSnapdragonシリーズのチップセットを採用する。
HUAWEI P50シリーズではKirinシリーズの採用は上位版に限定することになる。
なお、HUAWEI P50はQualcomm Snapdragon 888 4G Mobile Platform、HUAWEI P50 Proは麒麟4G全網通版がHUAWEI Kirin 9000、高通4G全網通版がQualcomm Snapdragon 888 4G Mobile Platformを搭載し、いずれも5Gに非対応のチップセットである。
Huawei Technologiesは米国政府が発動した制裁の影響で5Gに対応したチップセットの調達が困難であるため、HUAWEI P50シリーズは4G版で展開することを余儀なくされた。
米国の政府機関である商務省(Department of Commerce:DOC)傘下の産業安全保障局(Bureau of Industry and Security:BIS)は2019年5月16日付けでHuawei Technologiesとその関係者などをEntity Listに指定しており、Entity Listに指定された事業体に対する輸出管理規則(Export Administration Regulations:EAR)の対象品目の供給は許可制となるため、事前にライセンスを取得する義務が生じた。
米国原産の二重用途の汎用品、ソフトウェア、特許を含む技術、もしくはこれらの米国原産品が価値基準で一定以上の比率を含む場合に輸出管理規則の対象品目となり、供給には輸出、再輸出、国内移転も含まれる。
米国原産のソフトウェアおよび技術を使用して設計した半導体および米国原産の製造設備を使用して製造した半導体も輸出管理規則の対象品目に追加して厳格化したほか、2021年春頃からは5Gに対応した製品向けの半導体をはじめとした部品は審査を厳格化している。
ライセンスの申請は基本的に却下となるが、5Gに非対応の製品向けの部品は限定的に供給を許可しているため、Qualcomm TechnologiesはHuawei Technologiesに対してQualcomm Snapdragon 888 4G Mobile Platformを供給することができる。
Snapdragon 888シリーズでは5Gに対応したQualcomm Snapdragon 888 5G Mobile Platformを最初に製品化したが、Huawei Technologiesに供給するためには5Gの機能を削除する必要があり、後からQualcomm Snapdragon 888 4G Mobile Platformを製品化した。
事実上、Qualcomm Snapdragon 888 4G Mobile PlatformはHuawei Technologiesのために準備したチップセットと言える。
HiSilicon TechnologiesはHuawei TechnologiesとともにEntity Listに指定されており、その影響で半導体の設計や製造委託の機能が制限されている。
HUAWEI P40シリーズでは完全にKirinシリーズのチップセットを採用したが、HiSilicon Technologiesが開発したチップセットの供給量が十分ではないため、HUAWEI P50シリーズではSnapdragonシリーズの採用を余儀なくされた。
HUAWEI P50シリーズの仕様からは米国政府の措置が事業に大きく影響していることが見て取れる。
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