北朝鮮でスマホ補償サービスの手電話機保険が拡大、スマホ利用増で
朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)ではスマートフォンの利用者が増加しており、それに伴いスマートフォンを含めた携帯電話端末の補償サービスが存在感を高めている。
北朝鮮では2014年から2015年より一気にスマートフォンの利用が拡大した。
しかし、スマートフォンの流通量が増加するにつれて、落下時にディスプレイを破損するなどの事例も増えた。
ディスプレイが割れたスマートフォンの利用者は日本に限らず国内外でしばしば見かけるが、それは北朝鮮も例外ではない。
日本など世界各地で携帯電話端末の補償サービスやそれに類似したサービスが存在するが、北朝鮮では携帯電話端末の補償サービスとして「手電話機保険」への加入が拡大している。
なお、北朝鮮では携帯電話端末を手電話(손전화)もしくは手電話機(손전화기)と呼称する。
南側ではスマートフォンをスマートフォン(스마트폰)と呼ぶが、北朝鮮では外来語を積極的に利用せず、スマートフォンは知能型手電話(지능형손전화)もしくは知能型手電話機(지능형손전화기)となる。
手電話機保険は携帯電話端末の販売元に関係なく、北朝鮮の国営企業で同国の首都・平壌直轄市の中区域に本社を置くKorea National Insurance Corporation (朝鮮民族保険総会社:KNIC)のみが提供しており、携帯電話端末の購入時に加入できる。
移動体通信事業者(MNO)の取扱店には専用のブースを設けている場合もある。
有効期間は加入日から2年間で、紛失時や故障時に顧客の経済的負担を解消し、心理的に安心感を与えるという。
なお、北朝鮮の携帯電話端末の保証期間は一般的に購入日から15ヶ月間である。
加入料はSIMカードや移動体通信役務の料金を除いた携帯電話端末のみの価格の9%となっている。
2012年初めの時点ですでに登場しているサービスではあるが、当時は有効期間が加入日から1年間、加入料が携帯電話端末の価格の5%に設定されており、需要や内容に応じて改定された。
携帯電話端末を紛失した場合、携帯電話端末の価格の70%を補償金として受けられる。
過去には盗難のみを補償の対象と規定していた期間も存在するが、紛失に関する規則を改定して補償の範囲を拡大しており、すべての紛失を包括的に補償する。
従来のベーシックフォンやフィーチャーフォンより高価格なスマートフォンの利用が増加傾向であり、それを受けて安心して高価格なスマートフォンを使えるよう補償の範囲を拡大した。
そのため、盗難を証明する文書など複雑な文書の処理がなくとも、すぐに補償を受けられると説明している。
また、携帯電話端末が故障した場合、故障の回数に関係なく携帯電話端末の価格に到達するまで、修理金額の全額が補償の対象となる。
修理に必要な整備用部品の在庫の欠品など修理不可であれば、Foreign Trade Bank of the Democratic People’s Republic of Korea (朝鮮民主主義人民共和国貿易銀行:FTB)が提供する電子決済カードのNaraeに補償金額分を充填する。
補償金額は修理代金に相当する金額となり、機種や修理内容によって異なる。
スマートフォンの普及に伴って落下時にディスプレイが破損する事例も増えており、ディスプレイが割れたスマートフォンの利用者は日本国内外でよく目にするが、北朝鮮でも実際にディスプレイが破損したスマートフォンの利用者を見かけた。
訪朝時は運転手がディスプレイを破損したスマートフォンを利用していたが、購入時は手電話機保険の存在を十分に把握しておらず、次にスマートフォンを購入する際は加入すると話していた。
筆者は日本国内で携帯電話端末の補償サービスに加入しており、ある程度の安心感を得られているが、手電話機保険に加入する北朝鮮の人々も同様の心情だろう。
なお、電子決済カードのNaraeは朝鮮語で翼を意味しており、Naraeには翼をイメージしたロゴが描かれている。
Naraeの充填は朝鮮民主主義人民共和国ウォン(KPW)建てとなり、外貨の現金で充填する場合、ユーロ(EUR)、米ドル(USD)、中国人民元(CNY)、そして日本円(JPY)を利用できる。
充填された残高は移動体通信事業者の取扱店を含めた多くのNaraeに対応した商店で利用可能で、筆者もNaraeを利用して商品を購入した経験がある。
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