朝鮮中央テレビジョンの衛星切替後に受信障害の報告多数、5Gと干渉が影響か
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の政府機関である朝鮮中央放送委員会(The Radio and Television Broadcasting Committee of the Democratic People’s Republic of Korea:KRT)が運営する朝鮮中央テレビジョン(Central Television:KCTV)の衛星放送を日本などで受信しづらい事象が発生している。
日韓の複数の地点から報告を受けており、原因として衛星の切替および第5世代移動通信システム(5G)との干渉が考えられる。
近年は朝鮮中央テレビジョンの衛星放送では中国のChina Satellite Communications (中国衛通集団)が所有する中星12号(ChinaSat 12)を使用してきた。
しかし、2024年6月29日からはロシアのRussian Satellite Communications Companyが所有するExpress-103の使用を開始しており、2024年7月1日の午前には中星12号の使用を停止した。
事実上、朝鮮中央テレビジョンは衛星放送で用いる衛星を切替したことになる。
中星12号では4180MHzで朝鮮中央テレビジョンを受信できたが、Express-103では3707MHzで受信できる。
いずれもCバンドの周波数に含まれ、4180MHzは日韓ともに携帯電話で使わないが、近い周波数は日本ではKDDIおよび同社の連結子会社であるOkinawa Cellular Telephone Company (沖縄セルラー電話)が4000~4100MHzを5Gで使用している。
一方、3707MHzは日本では固定衛星業務と共用で携帯電話でも使用しており、KDDIおよびOkinawa Cellular Telephone Companyが3700~3800MHzを5Gで使い、NTT DOCOMOや韓国でSK Telecomが5Gで使用する3600~3700MHzとも近い。
衛星の切替後は5Gとの干渉を受けやすい周波数を使うため、朝鮮中央テレビジョンを受信しづらい事象が発生したと考えられる。
日本では2024年4月頃から朝鮮中央テレビジョンを受信しづらい事象が発生したことも報告を受けている。
KDDIは固定衛星業務と干渉抑止のため出力を下げてCバンドの5Gを運用していたが、2023年度末に衛星通信事業者が地球局を移転したため、関東地方を中心に衛星干渉条件が緩和しており、2024年4月以降にCバンドの5Gを高出力化した。
2024年4月頃から発生した朝鮮中央テレビジョンを受信しづらい事象も5Gが関連すると思われる。
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