公正取引委員会、携帯電話市場における競争政策上の課題を提示
- 2016年08月02日
- 携帯電話総合
公正取引委員会は「携帯電話市場における競争政策上の課題について」と題する報告書および関連資料を公開し、独占禁止法や競争政策の観点から課題などを示した。
携帯電話市場について総務省による一連の取り組みを踏まえて、移動体通信事業者(MNO)、仮想移動体通信事業者(MVNO)、販売代理店、中古端末販売店、端末メーカーなどからヒアリングを実施し、仮想移動体通信事業者の新規参入促進を中心に競争政策上の課題を検討したという。
通信役務市場、端末市場、アプリ市場に分けて課題などを提示しており、独占禁止法上の問題となる得る行為や競争政策上の望ましい行為など、公正取引委員会の考え方を明らかにした。
通信役務市場の競争においては、通信契約と端末販売の分離、中古端末の流通促進、端末へのSIMロック、期間拘束および自動更新付契約、移動体通信事業者の通信網などに対するアクセスを課題としている。
通信契約と端末販売の分離について、端末価格を通信料金から大幅に割り引く移動体通信事業者の販売方法は競争政策上では見直しが望ましいとする。
なお、この販売方法により仮想移動体通信事業者の新規参入や仮想移動体通信事業者の事業活動を困難にさせる場合には、独占禁止法上の問題となる可能性があるとしている。
中古端末の販売促進について、中古端末の流通を妨げることは仮想移動体通信事業者の新規参入を阻害し、また仮想移動体通信事業者の事業活動を困難にさせるため、独占禁止法上の問題となる得るという。
端末へのSIMロックについて、他の移動体通信事業者や仮想移動体通信事業者に乗り換える際の障壁となり得るため、競争政策上ではSIMロックをかけないことが望ましいとする。
期間拘束および自動更新付契約について、契約解除料は他の移動体通信事業者や仮想移動体通信事業者に乗り換える際の障壁となり得るため、競争政策上では契約解除料は必要最小限とすることが望ましいとする。
移動体通信事業者が顧客に対して長期契約の割安料金を提示し、顧客が中途解約することが困難な程度に契約解除料を不当に高く設定する場合には、独占禁止法上の問題となる可能性があるとしている。
移動体通信事業者の通信網などに対するアクセスについて、独自の国際ローミングサービスやIoT対応サービスの提供など、通信サービスの多様化に資する仮想移動体通信事業者独自のSIMカードの発行などを可能とするために、競争政策上では移動体通信事業者のHLR/HSSが仮想移動体通信事業者に解放されることが望ましいとする。
端末市場の競争においては、高額品に集中して特定ブランドが過半を占めるなど諸外国と比べて特徴的な市場と前置きし、端末購入に係る割賦契約と中古端末の流通促進を課題としている。
端末購入に係る割賦契約について、移動体通信事業者が端末購入に係る割賦契約の総額を機種ごとに固定することにより、実質的に販売代理店の端末の販売価格を拘束することは、独占禁止法上の問題となり得るという。
中古端末の流通促進について、移動体通信事業者が下取りした中古端末の日本国内における販売を端末メーカーが制限することや、移動体通信事業者などが不当に高い価格で中古端末を購入することは、独占禁止法上の問題となり得るという。
アプリ市場の競争においては、端末のOSとアプリケーションを課題としており、OS事業者が端末メーカーなどに対して有償および無償を問わずライセンス条件として自社のアプリケーションをデフォルト設定やホーム画面への配置を義務付けるなどにより、独立アプリ事業者による新規参入や技術革新を阻害することは、独占禁止法の上問題となり得るという。
課題には独占禁止法上の問題となる得るものと関係事業者において中期的に見直すことが期待されるものの双方が含まれており、公正取引委員会としては報告書が携帯電話市場の競争促進に寄与し、多様かつ低廉な製品などが消費者に提供されることを期待するとともに、携帯電話市場の動向を注視するとのことである。
また、独占禁止法に違反する疑いがある場合は調査を実施し、違反があれば厳正に対処するという。
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