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東南アジアの携帯電話市場 2017年の個人的な注目点



2017年を迎えたので外国の携帯電話市場に関して、筆者が重点的に注視する東南アジアの携帯電話市場における2017年の予想される動向や個人的に注視している点を紹介してみる。

気になることをすべて挙げると際限がないので、個人的に特に関心が強いことをピックアップする。

国に分けて紹介するので、興味ない国は読み飛ばしてもらえればと思う。

【フィリピン共和国】
フィリピンの携帯電話市場は2016年に大きな動きが見られた。Globe Telecomが携帯電話サービスの加入件数でPLDT傘下のSmart CommunicationsとDigitel Mobile Philippinesの合計を追い抜き、フィリピンで1位の携帯電話事業者となった。また、新規参入を計画していたSan Miguel Corporation (SMC)からPLDTとGlobe Telecomが分割して周波数資産を取得し、新たな周波数の利用も始まった。結果的にSan Miguel Corporationが新規参入する可能性は消滅したが、フィリピンでは2017年も新規参入の動きがある見通し。PLDTとGlobe Telecomはフィリピン政府の要請もあり周波数の一部を返却しており、フィリピン政府は2017年に新規参入のための周波数オークションを実施する方針を示唆している。Smart CommunicationsとDigitel Mobile Philippinesの実質的な統合もあり、フィリピンの携帯電話事業者はPLDTとGlobe Telecomの2社体制となっているが、再び3社体制に戻る可能性がある。
フィリピンでは地場メーカーの存在感が強く、Cosmic Technologies、MySolid Technologies and Devices、Star Telecom Alliance Resourcesがその代表格。携帯電話事業者が新たに開始した周波数への対応を積極的にアピールし、地上デジタル放送にも対応するなど、フィリピンへのローカライズも進めている。フィリピンは個性の強いスマートフォンが溢れる市場であることには変わりないはず。
フィリピンは前回の訪問から2年以上経過したため、再訪問しなければならないと考えているが、治安なども考慮するとあまり乗り気になれない。

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▲パサイ市,フィリピン共和国

【ベトナム社会主義共和国】
ベトナムではVNPT – VinaPhoneが2016年11月にLTEサービスを開始したが、少なくとも3社が2017年にLTEサービスを開始する見通し。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国では最後にLTEサービスを商用化した国であるが、2017年には周辺国から数年遅れでようやくLTEサービスが本格化すると思われる。また、KDDIとコンテンツ事業領域で業務提携契約を締結したMobiFoneは要注目の携帯電話事業者で、民営化の計画がある。すでに複数の外資企業が関心を示しており、ベトナムの携帯電話業界への外資による投資が進む可能性がある。
ベトナムには複数の地場メーカーが存在し、中国メーカーを筆頭に外国メーカーの参入も多く、非常に楽しい市場であるが、韓国のSamsung Electronicsは様々な意味で存在感がある。スマートフォンの人気があるだけではなく、ベトナムの工場でスマートフォンの大半を製造しており、ベトナム経済を支えている。そのため、Samsung Galaxy Note7の販売中止に伴う製造中止はベトナム経済に影響を与えた。Samsung Electronics全体としてはSamsung Galaxy Note7の販売中止が影響して2016年第3四半期は営業利益が大幅に減少し、スマートフォン事業を手掛けるIT&Mobile Communications (IM)事業の営業利益は低水準ではあったが、赤字にならなかった。しかし、Samsung Electronicsがベトナムで保有する工場のみを見ると2016年第3四半期は大幅な赤字を記録しており、ベトナムはSamsung Electronicsへの依存から脱却する必要がありそうだ。ベトナムにはODM企業やOEM企業の工場も多く、Foxconn Technology Group (鴻海科技集団)傘下のFIH Mobile (富智康集団)も工場を構える。製造拠点としてのベトナムも注目したい。
ベトナムは前回の訪問から1年ほどで、しばらくは再訪問する予定はないが、LTEサービスのライセンスを取得した4社のLTEサービスが出揃えば訪問を検討したい。

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▲ホーチミン市,ベトナム社会主義共和国

【カンボジア王国】
カンボジアは携帯電話事業者の統廃合が頻繁な国であるが、2016年は珍しくそれがなかった。ただ、6社の携帯電話事業者がひしめき合うカンボジアでLTE方式を導入するBWA事業者も登場し、さらには新規参入を計画する企業も存在する。Viettel (Cambodia)、Smart Axiata、CamGSMは加入件数ベースで一定のシェアを持つが、その他の携帯電話事業者は規模が小さくいつ撤退しても不思議ではない状況であり、落ち着くことはなさそうだ。また、カンボジアの象徴的な存在で世界遺産に登録されているアンコール・ワットのエリア整備が実施されるため、関係各社およびカンボジア政府の取り組みは注目したい動きのひとつである。
地場メーカーは一定の存在感があり、カンボジアに参入する中国メーカーも増えているが、South East Asia Telecom (Cambodia)を通じてスマートフォンを販売するPlus One Marketingの動向は特にチェックしておきたい。
カンボジアは前回の訪問から2年ほど経過し、その間に携帯電話事業者の顔ぶれは大きく変わり、SIMカードの購入時における実名登録が義務化となるなど制度も変わっているため、訪問の優先度は高めで考えている。なお、Sotelcoはカンボジアを訪問してから約3ヶ月後に撤退しており、今ではSotelcoのSIMカードは貴重なコレクションとなっている。

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▲プノンペン市,カンボジア王国

【ラオス人民民主共和国】
東南アジア唯一の内陸国、ラオスは経済規模が小さく、東南アジアの国の中でもあまり注目されていないはず。確かに外国メーカーの参入は遅れており、偽物の流通量が多く、魅力度は低い市場であるが、中国からの投資が進んでいる。国営の携帯電話事業者であるETLには中国企業が資本参加することが決定しており、外資企業の投資でラオスの携帯電話市場が活発化する可能性もある。また、携帯電話事業者のStar Telecomは事業規模を拡大しており、動画配信サービスも好評で、動画配信サービスによるデータ通信収入の増加も見込んでいる。市場規模が小さくARPU (1回線当たり月間平均収入)が低いラオスであるが、携帯電話事業以外で収益拡大を狙う動きはラオスでも激しくなるはず。
ラオスはセキュリティ意識が低い国で、SIMカードの購入時に実名登録などは義務化していない。ただ、周辺国ではSIMカードの購入時に実名登録を義務化する動きが加速しており、ラオスを囲む5ヶ国のうち4ヶ国が義務化を完了もしくは義務化を計画している。そんなラオスでも義務化される可能性があり、タイ政府が支援を表明している。ラオスを見下すタイはラオスが先行してLTEサービスを開始した際に悔しがったという話があるが、タイはラオスを支援することで中国の影響力が強まるラオスで自国のプレゼンスを高め、さらにはタイの安全性を高める狙いもある。南部を中心に懸念事項が潜在するタイは実名登録を厳格化し、一部地域ではローミングの利用を制限するなど保安には神経質になっている。タイ警察はテロの犯人を通話記録から特定してカンボジアとの国境付近で逮捕したこともあり、ラオスのようなセキュリティ意識が低い国はタイとしては歓迎していないはずだ。このようなこともタイが支援を表明した背景にあると思われ、2017年はラオスでも制度が見直されるかもしれない。
ラオスで現地法人を設立するメーカーは少ないが、Samsung Electronicsは2016年にラオス法人を設立しており、現地法人の設立前後で事業展開の変化に要注目である。

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▲ビエンチャン都,ラオス人民民主共和国

【ミャンマー連邦共和国】
ミャンマー(ビルマ)はアジア最後のフロンティアとして注目されている。2014年には外資企業が携帯電話事業に新規参入したが、2017年も新規参入がある見通し。2017年に新規参入する見込みの合弁会社には軍系のMyanmar Economic Corporation (ミャンマー経済公社:MEC)が子会社を通じて第二の株主として資本参加する予定。長期にわたる軍事政権下でミャンマーでは軍系企業の立場が高く、様々な事業に進出して利益を占めている。その影響もありMyanmar Economic Corporationは正式なライセンスを持たずに携帯電話事業を手掛けており、非公式な第4の携帯電話事業者と表現されることもある。Myanmar Economic Corporationが資本参加する合弁会社が正式に携帯電話事業を開始すれば、Myanmar Economic Corporationは既存の資産を活用して堂々と携帯電話事業を手掛けられる。軍事政権から民主化されてからも軍出身者が主要ポストに就き、実質的な軍事政権と言える状況が続いたが、2016年には政権を国民民主連盟(National League for Democracy)に明け渡した。国民民主連盟に政権を明け渡す直前に合弁会社の出資者が決定し、軍系企業が出資すると発表されたが、この背景には軍系企業の権益を確保する狙いもあるはず。ミャンマーの政治的背景と結びつく第4の携帯電話事業者、筆者としては東南アジアの中では注目度が非常に高い。外資企業の新規参入およびMyanma Posts and Telecommunications (ミャンマー国営郵便・電気通信事業体:MPT)がKDDIおよびSumitomo (住友商事)との提携後、携帯電話関連でミャンマーを訪れた人は多かったが、Myanmar Economic Corporationを注目していた人は多くなかったように思う。ミャンマーの携帯電話事業者としては日本企業がMyanma Posts and Telecommunicationsと共同事業を手掛けており、Myanma Posts and Telecommunicationsへの注目度はそれなりに高いと思われるが、軍系のMyanmar Economic Corporationも注目すべきと考える。ミャンマーではすでにMyanma Posts and Telecommunications、Telenor Myanmar、Ooredoo MyanmarがLTEサービスを開始しているが、Ooredoo Myanmarを除けば限定的であり、1.8GHz帯の取得後に本格化する見込み。1.8GHz帯の周波数オークションが2017年第1四半期に開催される見込みで、2017年はLTEサービスの本格化は間違いない。また、BWA事業者に2.6GHz帯が割り当てられており、TD-LTE方式を導入する見通し。具体的な開始時期は公表されていないが、早ければ2017年中に何らかの動きが見られる可能性が高い。2017年3月末にはSIMカードの購入時における実名登録も完全に義務化となり、制度面でも大きな変化が見られる年となる。
ミャンマーには中国を筆頭に、東アジア、東南アジア、南アジアから多くのメーカーが参入している。その中でも中国のGuangdong OPPO Mobile Telecommunications (広東欧珀移動通信)、vivo Mobile Communication (維沃移動通信)、Huawei Technologies (華為技術)は高い存在感を示しているが、携帯電話事業者も自社ブランドでスマートフォンを販売しており、個人的には携帯電話事業者の戦略も含めて注目度が高い。2017年も各社の熱い戦いが続きそうである。
ミャンマーは訪問してから半年程度であるが、金銭的に余裕があれば半年ごとに訪問したいくらいに見応えのある市場である。ネピドーは飛行機が運休となり行けなかった過去があり、またBWA事業者は地域で異なるため、ネピドーはいつか訪問したいと考えている。

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▲ヤンゴン市,ミャンマー連邦共和国

【タイ王国】
タイでは大手3社の携帯電話事業者はLTEサービスやVoLTEが出揃い、これからも新技術の導入はあると思われるが、大手3社の特に大きな動きは落ち着くと思われる。2015年にはJasmine Internationalが子会社を通じて周波数オークションで周波数を勝ち取り、2016年は新規参入で盛り上がるかに見えたが、ライセンス料を支払えず落札が無効となり、罰金の支払いがタイ政府より命じられた。新規参入の動きは収まる気配で、2017年は国有事業者の動きに注目したい。国有の携帯電話事業者であるCAT TelecomとTOTは携帯電話事業の統合案が浮上しており、携帯電話事業者が減少する可能性がある。CAT TelecomはTrue Move H Universal Communication (TUC)のネットワークを利用してLTEサービスを提供しているが、自社のネットワークを利用したLTEサービスも検討されている。また、TOTは2.3GHz帯の活用を模索しており、大手3社以外は加入件数シェアが非常に低いが、業界再編の動きとして注意を払いたい。タイでは2015年2月よりSIMカードの購入時に実名登録を義務化したが、さらに厳格化して2017年には指紋情報の登録も義務化する案が出ている。タイではテロが発生したことや、南部を中心に不安定な地域があるため、タイ政府はセキュリティ面の強化を図っている。指紋情報の登録を義務化すれば、東南アジアでは初の試みとなる。
タイは地場メーカーが多く、携帯電話事業者による自社ブランドの展開も盛んであるが、経済レベルや市場規模の観点から魅力的なタイの携帯電話市場は外国メーカーの動きが活発で、韓国のSamsung ElectronicsのほかGuangdong OPPO Mobile Telecommunications、vivo Mobile Communication、Huawei Technologiesが存在感を高めている。エントリークラスのスマートフォンが売れる傾向にあるが、これからはミッドレンジのスマートフォンが比率を高めると思われる。Guangdong OPPO Mobile Telecommunicationsはタイにおける事業を強化する方針で、タイに特化したミッドレンジのスマートフォンを投入する計画も表明しており、本気でトップを狙うための動きを見せる1年となるはず。地場メーカーに関しては意匠的に問題があるスマートフォンも多いため、改善を期待したい。
タイは訪問してから半年程度であるが、携帯電話事業者間のVoLTEによる高音質通話を東南アジアで初めて商用化したため、それを試すためにも訪問したいところである。

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▲バンコク都,タイ王国

【マレーシア】
マレーシアは既存の携帯電話事業者4社はキャリアアグリゲーションやVoLTEの導入などはあったが、2016年には概ね落ち着いており、周波数の再割当も円滑に進んだ。ただ、ポストペイドプランで批判を招いたMaxisやネットワークの品質で不満が出ているCelcom Axiataは携帯電話サービスの加入件数が減少傾向で、トップも経験したCelcom Axiataは初めて3位に転落し、一方でネットワークの強化に努めるDigi Telecommunicationsは初めて1位に躍り出た。ただ、マレーシアは上位3社が団子状態であり、2017年も短い期間で順位が入れ替わる可能性がある。2016年の大きな動きと言えば、WiMAX方式を提供しているBWA事業者が携帯電話事業者に転身したことだろう。YTL Communciationsとwebe digitalはBWA事業者から携帯電話事業者に転身したところまでは同じであるが、料金プランなどは真逆の戦略を取っている。携帯電話事業者が6社体制になったマレーシア、各社の戦略は加入件数の増減と順位にすぐに反映されるため、定期的にチェックしておきたい。また、携帯電話用の周波数を保有しながら商用サービスを提供していない企業もあるので、2017年こそは何らかの動きを期待したい。
メーカーに関してはGuangdong OPPO Mobile Telecommunicationsは携帯電話事業者のU Mobileとの提携後からシェアは比較的高いが、vivo Mobile Communicationも攻勢に出ており、マレーシアでもGuangdong OPPO Mobile Telecommunicationsとvivo Mobile Communicationのオフラインにおける競争が激化するはず。マレーシアでは依然としてSamsung Electronicsのシェアが比較的高いが、Guangdong OPPO Mobile Telecommunicationsとvivo Mobile Communicationの戦略は中国に限定せずマレーシアでも注目したい。
マレーシアはしばらく訪問していないが、携帯電話事業者が増加して市場が大きく変わっているため、優先度は高めで考えている。

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▲セパン市,マレーシア

【シンガポール共和国】
東南アジアでミャンマーと並んで注目度が高い国はシンガポール。やはり、シンガポールは携帯電話事業者の新規参入が一番の注目点でしょう。豪州のTPG Telecomが第4の携帯電話事業者となり、規則上は2017年4月以降に新規参入できる。携帯電話サービスの開始は2018年となる可能性もあるが、2017年には準備を含めた何らかの動きがあることは間違いない。シンガポールで最後に新規参入した携帯電話事業者はStarHub Mobileの2000年4月であり、17~18年ぶりの新規参入となる。MyRepublicも新規参入を狙ったが、周波数オークションでTPG Telecomに敗れた。MyRepublicには新規参入後の計画も聞いており、新規参入が決まれば記事化を計画していたが、残念ながらそれはなくなった。シンガポールではもうひとつ、大きな動きがある。シンガポールの携帯電話事業者全社が2017年3月末をもってGSM方式を停波する。次世代通信への移行を理由として国全体でGSM方式を停波する事例は世界でシンガポールが初めてである。また、GSM方式の停波に伴い周波数の利用ライセンスも満期を迎えるが、それの一部の再割当の周波数オークションが2017年第1四半期に開催される見通しで、大きな動きが多い1年となる。
筆者が初めてGSM方式を試した国がシンガポールであるため、シンガポールのGSM方式を最後に体験しに行きたい気もするが、訪問は未定。行くのであれば周辺国とセットで回りたいところ。

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▲シンガポール共和国

【ブルネイ・ダルサラーム国】
ブルネイ・ダルサラームは2016年は特筆すべき大きな動きがあまりなかった。当初はProgresif Cellularが2016年半ばに本社移転およびLTEサービスの開始を計画していたが、大幅に遅れている。2017年こそはProgresif Cellularの本社移転を完了し、LTEサービスも開始する見通しであるため、個人的にはProgresif Cellularの動向に注目しておきたい。ブルネイ・ダルサラームの携帯電話事業者はDST CommunicationsとProgresif Cellularの2社体制で、DST Communicationsが支配的な状況であり、Progresif Cellularは解散寸前からブルネイ・ダルサラーム政府に救われた。ブルネイ・ダルサラーム政府が第2の携帯電話事業者の新規参入を推進した経緯があり、新規参入に成功したものの経営不振から解散となればブルネイ・ダルサラーム政府の政策は事実上の失敗となるため、ブルネイ・ダルサラーム政府が傘下企業を通じて買収してブランド名も変更した。本社移転やLTEサービスの開始は競争力を高める狙いがあり、ブルネイ・ダルサラームで久しぶりに大きな動きとなる見込み。
前回訪問はProgresif Cellularのブランド変更直後であり、ブランド変更前の名残も見られたのは印象的である。大きな動きが少ない国であるため、Progresif CellularがLTEサービスを開始すれば再訪問するにはよさそうなタイミングである。ブルネイ・ダルサラームはイスラム教に基づくシャリーア刑法を導入しており、ラマダーンの断食も厳格で外国人も適用対象である。初訪問の時はラマダーンの期間中で飲食に困ったほか、携帯電話事業者の営業時間も変更されて面倒なことが多かったため、次回訪問はラマダーンの期間は避けたいところである。

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▲バンダルスリブガワン市,ブルネイ・ダルサラーム国

【インドネシア共和国】
インドネシアは携帯電話事業者各社がLTEサービスを開始し、少し落ち着いた傾向にあるが、Telekomunikasi Selularが4×4 MIMOを導入したように、新技術の導入はチェックしておきたい。また、TD-LTE方式を導入したBWA事業者も増えており、BWA事業者の動向も注視しておく価値はあるだろう。
インドネシアで注目すべき点は現地調達率の厳格化。2017年1月1日から現地調達率を厳格化しており、現地調達率の厳格化に先立ち撤退したメーカーも存在する。現地調達率にはインドネシアにおける製造なども判断材料に含まれており、インドネシアに自社工場を保有するメーカーには有利に働くが、インドネシアに自社工場を保有していない企業や、インドネシアのOEM企業またはODM企業と提携してスマートフォンを製造している企業にとっては厳しくなるかもしれいない。現地調達率の厳格化に伴うメーカーの動向は2017年のインドネシアでは最も注目しておきたい。インドネシアではSamsung ElectronicsやGuangdong OPPO Mobile Telecommunicationsのシェアが高いが、個人的にはBlackBerryも要注目である。BlackBerryは一部の国を除いてグローバルでTCL Communication Technology Holdings (TCL通訊科技控股)とブランドライセンス契約を交わしたが、インドネシアは対象外となっている。インドネシアではBB Merah Putihとブランドライセンスを契約しており、BB Merah PutihにはTelekomunikasi Selularの関連会社も出資するため、Telekomunikasi Selular系列の販路を活用して販売すると思われる。過去にインドネシアではBlackBerryが人気の時代があり、BlackBerryを模倣したようなQWERTYキーボードを搭載したスマートフォンやBBMをプリインストールするスマートフォンも売られているが、そんなインドネシアではTelekomunikasi Selularと提携して他国とは異なる展開を見せると予想できる。
インドネシアは訪問してからしばらく訪問していないため、遠くないうちに訪問したいところであるが、BWA事業者は地域で異なるため、まずは行く都市を考えなければならない。

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▲南ジャカルタ市,インドネシア共和国

【東ティモール民主共和国】
東ティモールではViettel Timor Lesteが2016年中にLTEサービスを開始すると示唆していたが、実現しなかった。2017年こそはLTEサービスの開始も期待したい。また、Viettel Timor Lesteは加入件数を順調に伸ばして大躍進を遂げた一方で、東ティモールの独立後から長年独占したTimor Telecomは苦戦している。Timor TelecomにはブラジルのOiが出資しているが、Oiは経営破綻しており、Timor Telecomへの投資も停滞している。OiはTimor Telecomの株式を売却する方針を固めており、2017年にはTimor Telecomの主要株主が入れ替わり、巻き返しに出る可能性も高い。Oiの経営状況を考慮するとOiが出資する状況では期待できそうにないため、OiにとってもTimor Telecomにとっても、Timor Telecomは新たな株主のもとで建て直しを図る方がよさそうだ。
東ティモールは訪問してから1年程度であるため、もうしばらくは再訪問する計画はない。

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▲ディリ市,東ティモール民主共和国

【東南アジア全般】
東南アジア全般としてはローミングの戦略に注目しておきたい。特定の国や携帯電話事業者においてローミングを低廉な料金で提供する携帯電話事業者が東南アジアに限らず増えてきたが、東南アジアでは近隣諸国を中心にローミング料を撤廃する携帯電話事業者も増加傾向にある。ベトナムのViettel Groupは2017年よりベトナム、カンボジア、ラオスでグループ内の携帯電話事業者を対象としてローミング料を撤廃しており、マレーシアのAxiata Groupはそれに対抗する方針を示した。概してグループ企業間でローミング料を撤廃する傾向にあり、主要な携帯電話事業者のグループ全体の経営戦略と合わせて注視しておきたい。

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