TPG TelecomとVodafone Hutchison Australiaの合併計画、豪州当局が却下
- 2019年05月09日
- 海外携帯電話
豪州の政府機関である豪州競争消費者委員会(Australian Competition and Consumer Commission:ACCC)は豪州のTPG TelecomとVodafone Hutchison Australia (VHA)の合併計画を却下する決定を下したと発表した。
TPG TelecomとVodafone Hutchison Australiaは対等合併で合意しており、新会社の名称はTPG Telecom (以下、新TPG Telecom)とし、新TPG Telecomに対する出資比率はTPG Telecomの株主が49.9%、Vodafone Hutchison Australiaの株主が50.1%とする計画を示していた。
なお、Vodafone Hutchison Australiaは英国のVodafone Groupと香港特別行政区を拠点とする英領ケイマン諸島のCK Hutchison Holdings (長江和記実業)の子会社で豪州のHutchison Telecommunications (Australia)の折半出資合弁会社である。
TPG Telecomは子会社のTPG Internetを通じて第4の移動体通信事業者(MNO)として新規参入することを計画していたが、移動体通信事業者として新規参入する計画を断念した。
TPG Internetはすでに周波数を取得しており、中国のHuawei Technologies (華為技術)より調達した基地局の設置を開始していたが、豪州政府は第5世代移動通信システム(5G)でHuawei TechnologiesおよびZTE (中興通訊)の通信設備の採用を禁止し、豪州政府の決定を受けてTPG TelecomおよびTPG Internetは移動体通信事業者としての新規参入を断念すると表明していた。
ただ、実際はHuawei Technologiesの件は関係なく、既存の移動体通信事業者であるVodafone Hutchison Australiaと合併すればTPG Internetが独立したモバイルネットワークを構築する必要がなくなるため、建前上の理由としてHuawei Technologiesの排除を挙げたとの見方もある。
豪州競争消費者委員会はTPG TelecomとVodafone Hutchison Australiaの合併計画の審査結果の発表を延期していたが、延期の末に下した結果が却下となった。
豪州の電気通信市場は移動体通信の占有率がTelstra、Singtel Optusの子会社であるOptus Mobile、Vodafone Hutchison Australiaで87%以上、固定通信の占有率がTelstra、Singtel Optus、TPG Internetで85%程度となっており、それぞれ3社の寡占状況にある。
豪州競争消費者委員会の議長が却下の背景を説明しており、長期的な業界動向を考慮すると、TPG Internetが自社のモバイルネットワークを構築する必要があり、Vodafone Hutchison Australiaは固定通信事業を本格化する必要があるとの考え方を示した。
特に移動体通信分野ではTPG Internetの新規参入が競争の促進のために最善であり、競争を促進する最後の機会になる可能性が高いという。
TPG TelecomとVodafone Hutchison Australiaが合併すれば、TPG Internetが移動体通信事業者として新規参入することを妨げ、移動体通信分野で競争を低下させる可能性が高いと結論付けた。
また、TPG TelecomおよびTPG Internetは移動体通信事業者としての新規参入を断念すると発表したが、豪州競争消費者委員会の徹底的な調査の結果、合併計画が却下された場合は移動体通信事業者として参入する方針に切り替える可能性が高いと判断したと説明している。
要約すると、豪州競争消費者委員会は移動体通信と固定通信ともに3社体制から4社体制として競争を促進すべきであり、合併計画は4社体制化を阻止するため却下が相応しく、合併計画を却下すればTPG Telecomは移動体通信事業に関する計画で方針転換する見込みとの考え方を示したことになる。
なお、TPG Internetは仮想移動体通信事業者(MVNO)として大容量のデータ通信を安価で提供し、豪州の移動体通信業界に刺激を与えた実績があり、豪州競争消費者委員会は移動体通信事業者としても同様に刺激を与える存在となることを期待している模様である。
豪州では2018年12月に5G向けの3.5GHz帯の周波数オークションが開催されており、TPG TelecomとVodafone Hutchison Australiaは合併を想定して合弁会社のMobile JVを通じて参加し、Mobile JVとして周波数の獲得に成功しているため、合併計画の却下によって周波数の割当に関しても混乱が生じる可能性がある。
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