香港で21Vianet Mobileが提供するMVNOサービスVaveを試す
- 2015年12月31日
- Report
香港特別行政区(以下、香港)で中国の21Vianet(世紀互聯)傘下の21Vianet Mobile(世紀互聯移動通訊)がブランド名をVaveとしてサービスを開始した。
Vaveはプリペイドプランのみ提供しており、香港に寄った際にVaveのプリペイドSIMカードを購入して試してみた。
なお、購入したパッケージは30 Days Vave Unlimited Local Data SIM Card (30天Vave無限本地数据儲値卡)で、パッケージ記載の通り238香港ドル(約3,800円)で購入した。
Vaveは複数のパッケージを用意しているが、VaveのプリペイドSIMカードを購入した販売店では他のパッケージは取り扱っておらず、仕方なく約5時間の滞在のために30日のプランを開通することになった。
SIMカードのサイズはMini SIM (2FF)サイズ、Micro SIM (3FF)サイズ、Nano SIM (4FF)サイズの3種類に切り抜くことが可能となっている。
データ通信容量は無制限、APNは21VNと案内しているが、適当な文字列を設定しても通信できた。
21Vianetと言えば香港における2.3GHz帯のライセンスを保有していることが知られている。
Office of the Communications Authority(通訊事務管理局弁公室:OFCA)が2012年2月6日に実施した2.3GHz帯における広帯域ブロードバンドアクセス(BWA)のライセンスのオークションで2.3GHz帯の30MHz幅を取得している。
21Vianet MobileによるVaveのサービスは、この21Vianetが取得した2.3GHz帯でTD-LTE方式のサービスを開始したものと期待して使ってみた。
パッケージには4Gのエリア外では3G/2Gを利用可能と記載されており、21Vianetおよび21Vianet Mobileは3G/2G用の周波数を保有しないため、他社のネットワークを使うことは想定の範囲内ではあった。
香港到着後から何度かネットワークを検索するものの21Vianet Mobileのネットワークは検出できず、少し嫌な予感はしていたものの、とりあえず開通してみるとCSL Mobile(香港移動通訊)の旧PCCW-HKT側のネットワークに接続した。
CSL MobileはLTE-Advancedの主要技術であるキャリアアグリゲーションを導入しており、端末側が特定の周波数および特定の組み合わせのキャリアアグリゲーションに対応していればVaveのプリペイドSIMカードでもキャリアアグリゲーションを利用できる。
Samsung Galaxy Note5 (SM-N9200)ではVaveのプリペイドSIMカードでキャリアアグリゲーションを使えたが、CSL Mobileのキャリアアグリゲーションを使うためにVaveのプリペイドSIMカードを購入したわけではないためまったく嬉しくなかった。
21Vianet Mobileのネットワークを検出しない時点で嫌な予感はしていたが、大阪へ戻る飛行機に搭乗するまでずっとCSL Mobileのネットワークに接続していた。
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VaveのプリペイドSIMカードを挿入してネットワークを検索すると21vianetと表示されたが、接続先はCSL Mobileのネットワークである。
国内ローミングでCSL Mobileのネットワークを利用する可能性は考えたが、結局は21Vianet Mobileのネットワークをまったく使えず、これには疑問を感じずにいられなかったため、簡潔に検証結果をレポートにまとめてOFCAにメールで投げてみた。
どうせOFCAは相手にしてくれないだろうとまったく期待していなかったが、予想に反して非常に丁寧な説明が返ってきた。
OFCAによる説明の主な要点は下記の通り。
・21Vianet Mobile ≠ 21Vianet
・21Vianet Mobileの免許はServices-Based Operator (SBO) Licence
・21Vianetの免許はUnified Carrier Licence (UCL)
・SBO Licenceでは無線通信設備の建設と管理は不可
要するに21Vianet Mobileと21Vianetは別会社であり、免許の種別が異なるということである。
この免許の種別についても解説いただき、SBO Licenceには仮想移動体通信事業者(MVNO)サービスの免許が含まれており、移動体通信事業者(MNO)を含めた施設ベースの事業者はUCLが必要となる。
なお、SBO LicenceはMVNOとしてのサービスのみを対象としたものではないが、ここでは割愛しておく。
21Vianet Mobileの場合はCSL Mobileのネットワークを利用したMVNOサービスが認められており、免許種別がSBO Licenceであるため21Vianet Mobileが自社で無線通信設備を保有することは不可との説明を受けた。
一方で、21Vianetは2.3GHz帯を保有していることには間違いないが、2015年11月25日の時点で移動体通信サービスは認められておらず、2.3GHz帯を利用した固定通信サービスを提供するためにUCLが交付されているとのことである。
以上のことを簡単にまとめると下記の通り。
・21Vianet MobileのVaveはCSL MobileのMVNOサービス
・21Vianetは2.3GHz帯を利用して固定通信サービスを提供予定
というわけで、Vaveは新規参入の携帯電話事業者ではなく単なるMVNO、以上。
CSL Mobileしか接続できないという検証結果は正しかったことになるが、あまり嬉しくはない。
なお、2.3GHz帯における広帯域ブロードバンドアクセス(BWA)のライセンスは交付時に条件が設定されており、有効期間が15年でライセンス取得から5年以内に移動体通信で利用する場合は人口カバー率50%、固定通信で利用する場合は200以上の商業施設などをカバーすることと定められている。
21Vianetは固定通信の条件が適用されるため、2017年2月までに200以上の商業施設をカバーすることが求められる。
今後、商業施設の密集地で21Vianetのネットワークを検出する可能性もあるが、21Vianet Mobileが提供するプリペイドSIMカードでは免許上利用不可である。
Vaveのサービスは21Vianetが21Vianet Mobileを通じて移動体通信サービスを開始したと思い込んでいたが、実態は大きく異なっていた。
実際に使って検証していなければ疑問を感じることなく今でも新規参入のMNOと思い込んでいただろうし、改めて自分自身で検証することの大切さを感じたところである。
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香港のMNC割当一覧を見ると21Vianet MobileはMVNOに分類されており、これで諸問題は解決。
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