ベトナム・ハノイ市で公安省傘下GmobileのSIMカードを購入、警察署内でも販売
- 2019年04月26日
- Report
ベトナムの首都・ハノイ市を訪問して同国の移動体通信事業者(MNO)であるGlobal Telecommunications Corporation (以下、GTEL)のSIMカードを購入したので紹介する。
ベトナムではポストペイド契約とプリペイド契約ともにSIMカードの利用にあたり実名登録を義務化し、ベトナムの政府機関で電気通信分野の規制を司る情報通信省(Ministry of Information and Communications:MIC)は2018年4月24日までにIDカードの情報と顔写真を登録するよう要求していた。
そのため、ベトナムでプリペイドSIMカードを購入する場合はIDカードの提示と顔写真の撮影が必須となる。
なお、ベトナム国籍でない場合は有効な旅券をIDカードの代わりに使えるため、日本国籍であれば日本国旅券で問題ない。
正しく実名登録を実施していないSIMカードの利用は不正利用であるため、十分に注意したい。
多少は面倒でも法令を遵守して安全にSIMカードを利用するため、筆者はハノイ市内にあるGTELの本社敷地内に設置された直営店でSIMカードを購入した。
■GTELの概要
まずは、GTELの概要を紹介する。
GTELは公安省(Ministry of Public Security)が所有する企業で、移動体通信事業がGmobileのブランド名で展開している。
GTELの移動体通信事業は過去にGTEL-Mobile Joint Stock Company (以下、GTEL-Mobile)を通じて展開していたが、登記情報を確認するとGTEL-Mobileが消滅しているため、GTEL-MobileはGTELに統合した模様である。
GTEL-Mobileは過去に外資企業が出資しており、GTELとオランダに本社機能を置く英領バミューダ諸島のVimpelCom (現:VEON)の合弁会社で、出資比率はGTELが51%、VimpelComが49%となっていた。
しかし、VimpelComは合弁解消を決定し、GTEL-MobileはGTELの完全子会社となった。
GTEL-Mobileの事業規模は極めて小さく、単独の法人として維持することは非効率な状況となり、GTELに統合した可能性が高い。
VimpelComが資本参加していた時代はブランド名をVimpelComが保有するBeelineとして展開していたが、VimpelComの撤退に伴いブランド名をGmobileに改めて経緯がある。
Gmobileのブランドカラーである黄色と黒はBeelineのそれを継承している。
加入件数はベトナムで最も少なく、2019年初めの時点で加入件数の占有率はわずか0.4%と1%を下回る状態にある。
■通信方式と周波数
通信方式および周波数はGSM方式の1.8GHz帯を利用する。
ベトナムでは地域によって周波数の利用状況が異なる移動体通信事業者も存在するが、GTELはベトナム全土でGSM方式の1.8GHz帯のみを運用している。
LTE方式を導入できる第4世代移動通信システム(4G)のライセンスも保有しているが、LTE方式は導入していない。
ベトナムの電気通信法第39条ではライセンスの交付から2年以内にライセンスで指定された内容を実施しない場合、情報通信省はライセンスを剥奪できると定められている。
GTELは4Gライセンスを取得してから2年が経過しており、情報通信省はGTELに対する4Gライセンスを剥奪できる権利を持つが、公安省傘下の特殊な企業であるためか4Gライセンスの剥奪には至っていない。
■プリペイドSIMカードのプラン
GSM方式のみを採用するため、使いものにならないことは使う前から分かっていた。
そのため、パッケージは加入せずにデータ通信を少し利用できる程度のチャージにとどめると決めていた。
SIMカード新規発行料は30,000ベトナムドン(約140円)で、20,000ベトナムドン(約100円)をチャージし、合計で50,000ベトナムドン(約240円)を支払った。
■使用感など
SIMカードのサイズはNano SIM (4FF)サイズ、Micro SIM (3FF)サイズ、Mini SIM (2FF)サイズのトリプルカットであるため、特にSIMカードのサイズを気にする必要はない。
APNは設定する必要があればinternetで問題なくデータ通信を使えた。
実名登録のための旅券の提示および顔写真の撮影を求められ、安心して正しい方法でSIMカードを入手することができた。
極めて小規模な移動体通信事業者であるが、さすが公安省傘下ということで実名登録の手続きはしっかりと実施している。
ただ、通信方式はGSM方式のみでエリアも限られるため、正直なところまったく使いものにならない。
占有率が0.4%にとどまるという悲惨な状況がすべてを物語っている。
明確に申し上げるが、サービスとしては利用する価値がまったくないため、GTELは推奨しない。
ただ、どうしても警察署に入りたい、良番を入手したい、このような特殊事情がある場合のみ、GTELを選んでも悪くないかもしれない。
GTELは公安省傘下のため、公安省が管轄する警察署の一部にはGTELの販売店が入っている。
ただ、警察署の敷地に入るためには手荷物検査などが必要で、余計な手間がかかることからあまり推奨はしない。
ベトナムでは9が好まれる数字で、099番号帯はGTELに割当されているため、GTELの電話番号は9が並ぶ電話番号が多い。
ハノイ市では良番を入手できなかったが、ホーチミン市では9が5つも含まれる良番を入手した経験がある。
ベトナムでは番号ポータビリティ(MNP)が開始したが、GTELは番号ポータビリティに参加していないため、099番号帯はGTELのみで入手できる。
確実に良番を入手できるとは限らないが、良番が欲しいならばGTELはよい選択肢であり、筆者としてはGTELの回線の所有者はほとんどが良番狙いではないかと推測している。
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