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北朝鮮の携帯電話の原点、羅先特別市

  • 2021年01月01日
  • DPRK


これまで、数年間にわたり海外で携帯電話事情を現地了解する目的で年に数度の頻度で海外渡航したが、2020年は久しぶりに海外渡航できない年となった。

2020年は海外で携帯電話事情を現地了解できなかったが、2021年の年始期間は特に外出の予定もないため、これまでに訪問した都市の中から印象的な都市と訪問の背景を時間が許す限り執筆したいと思う。

今回は朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の羅先特別市を取り上げたい。

羅先特別市は北朝鮮の北東部に位置する都市で、羅先経済貿易地帯法を整備して事実上の経済特区となっている。

筆者は8月に羅先特別市を訪問したが、同年に羅先特別市を訪問した日本人は筆者が4人目とのことで、年によって多少の増減は当然あるとしても日本人の渡航は極めて少ない。

このような羅先特別市になぜ関心を持ち、訪問を決断したか、もちろん携帯電話事情が関係している。

北朝鮮において下記の全部に該当する都市をご存知だろうか。

1. 最初の携帯電話事業者の本社
2. 最初の携帯電話事業の免許
3. 最初の携帯電話サービスの提供エリア

正解は羅先特別市である。

3に限定すると首都・平壌直轄市も正解ではあるが、全部を満たす羅先特別市は北朝鮮における携帯電話の歴史の原点と言える。

先に平壌直轄市などを訪問したこともあり、羅先特別市の訪問も決断した。

それでは、北朝鮮で最初の携帯電話サービスを商用化するまでの過程を振り返りたい。

羅先特別市は羅先-先鋒直轄市として咸鏡北道から独立し、羅津-先鋒自由経済貿易地帯法を整備して外資を積極的に受け入れることになった。

なお、羅先-先鋒直轄市は地位および自治体名の変更を経て羅先特別市となり、自治体名の変更に合わせて関連する法律の題名も改題したが、自治体名は変更前の時期も含めて羅先特別市に統一して表記する。

経済特区に相当する位置付けから通信分野では平壌直轄市より先に外資の受け入れを決定した。

タイのLoxleyと北朝鮮の政府機関で通信分野などの規制を司る逓信省(Ministry of Posts and Telecommunications:MPT)は1995年9月29日に羅先特別市で通信網を構築して27年間にわたり携帯電話事業を含めた通信事業を展開するための契約を事業独占権付きで締結し、Loxleyの参入が決まった。

契約には通信分野で1997年から2,800万米ドル(約28億9,097万円)を投資し、1998年までに携帯電話サービスを商用化することも含まれた。

Loxleyは羅先特別市で通信事業を展開するために複数の外部企業と共同でLoxley Pacific (以下、Loxpac)をタイで設立し、その後にLoxpacは逓信省が完全所有する国営のKorea Posts and Telecommunications Corporation (朝鮮逓信会社:以下、KPTC)と外国人投資法に規定される合作企業としてNorth East Asia Telephone and Telecommunications (東北アジア電話通訊会社:以下、NEAT&T)を羅先特別市で設立した。

北朝鮮法人のNEAT&Tが免許人として通信事業を展開することになり、後に北朝鮮で最初の携帯電話事業者となった。

NEAT&Tに対する出資比率はLoxpacが70%、KPTCが30%で、利益配分は投資金額を回収後の最初の年から15年間はLoxpacが70%、KPTCが30%、16年目からはLoxpacが40%、KPTCが60%である。

取締役会に相当するNEAT&Tの理事会は14名の理事で構成し、LoxpacとKPTCが7名ずつ指名、会長はLoxpac、社長はKPTCが指名した理事が努め、決議要件として賛成が過半数を上回ることやLoxpacとKPTCが指名した理事の双方から少なくとも1名ずつ賛否表明が必要と定めた。

1998年7月には逓信省がNEAT&Tに対して羅先特別市に限定して第2世代移動通信システム(2G)のGSM方式で携帯電話事業を運営および提供するための免許を付与し、北朝鮮で初めて携帯電話事業の免許が交付された。

2001年8月25日にLoxpacが羅先特別市で450万米ドル(約4億6,467万円)を投資して完成した羅先国際通信センター(RASON INTERNATIONAL TELECOMMUNICATION CENTRE)の操業式を開催して運用を開始し、2020年時点でもNEAT&Tの本社として機能している。

羅先国際通信センターの外観はタイの首都・バンコク都に所在かつLoxleyの本社が入居するLoxley Buildingと似た外観に仕上げられた。

筆者は羅先国際通信センターとLoxley Buildingいずれも訪問したことがあり、確かに正面は似た雰囲気である。

建設工事は中国の吉林省延辺朝鮮族自治州・延吉市に本社が所在するJilin Tianyu Construction Group (吉林天宇建設集団:以下、Tianyu)が行い、操業式にはLoxpacやKPTCの関係者に加えてTianyuの関係者も出席していた。



羅先国際通信センターの1階



羅先国際通信センターの正面

NEAT&Tは携帯電話サービスの商用化が当初の計画より遅れていたが、対象区域を羅先特別市から北朝鮮全土に拡大し、2002年11月11日にSUNNETとして北朝鮮で最初の携帯電話サービスを商用化した。

まずは平壌直轄市および羅先特別市が提供エリアとなり、通信方式は当初の計画通りGSM方式で、周波数は900MHz帯である。

Loxleyの子会社でタイのLoxley Wirelessが2000年よりスウェーデンのEricssonと協力して事業を展開していたため、Ericssonの通信設備を使用することになった。

2003年9月までに主要都市で合計40局以上の基地局を設置し、1局当たり半径4km前後をカバーしており、道人民委員会所在地、平壌直轄市と南浦特別市、開城特別市、咸鏡南道咸興市、江原道元山市、平安南道香山郡を結ぶ主要な道路も提供エリアに加えた。

加入件数は2003年2月上旬時点で約3,000件、加入費は2003年12月時点で750ユーロ(約95,000円)に設定されていた。

NEAT&Tの携帯電話サービスは2004年5月24日に提供を終了したが、KPTCがNEAT&Tの協力を得てNEAT&Tの通信設備を使用して2010年12月末まで引き続きSUNNETとして政府関係者や長期滞在の外国人などを対象に限定的な携帯電話サービスを提供していた。

携帯電話サービスの終了後は羅先特別市に限定して他社が運用を開始した携帯電話サービスやスマートフォンなどの携帯端末を販売する代理店として機能するほか、携帯端末の修理も手掛けることを訪問時に確認できた。



羅先国際通信センターの携帯電話商店

Loxpacは2013年後半に社名をLoxpac (Thailand)に変更し、2018年3月31日からは事業を停止したため、NEAT&Tに関連する権利義務はKPTCが承継した。

2020年時点で羅先特別市ではKPTCがKANGSONG NET (強盛網)として携帯電話サービスを提供している。

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