iPhone 12 Proで楽天モバイルの5Gを試す、実測で1Gbps超も
- 2021年04月28日
- Report
米国のApple製のスマートフォン「iPhone 12 Pro」でRakuten Mobile (楽天モバイル)が提供する第5世代移動通信システム(5G)を試してみた。
Appleは2021年4月27日によりRakuten Mobileのキャリア設定の提供を開始しており、OSのバージョンがiOS 14以降のiOSかつRakuten Mobileのキャリア設定を適用したiPhoneはRakuten Mobileが移動体通信事業者(MNO)として提供する楽天回線に対応した。
さらに楽天回線に対応したiPhoneのうち、5Gに対応したiPhone 12 Pro、iPhone 12 Pro Max、iPhone 12、iPhone 12 miniではRakuten MobileのSIMカードを利用時に5Gの有効化が可能となり、Rakuten Mobileが提供する5Gを利用できるようになった。
そのため、iPhone 12 ProがRakuten Mobileの5Gに対応した当日に試すことにした。
なお、検証に用いたiPhone 12 Proは日本国内で正規購入したSIMロックフリー版で、型番はA2406、OSのバージョンはiOS 14.5、キャリア設定のバージョンはRakuten 46.1である。
近畿地方の2ヶ所で5Gの通信速度を測定したところ、1ヶ所目は下りが500~700Mbps前後、上りが90~120Mbps前後を記録し、2ヶ所目は下りが700~1100Mbps前後、上りが120Mbps前後を記録した。
平均的な速度は2ヶ所目の方が速く、下りは1Gbpsを超えることもあった。
基地局のそばで信号強度が強く安定し、信号品質が良好な場所を確保できれば、5Gの特徴のひとつである超高速通信を楽しめるが、5Gのエリアでも常にそうとは限らない。
Rakuten Mobileが公表したエリアマップを参照しても5Gのエリアは極めて限定的であるが、エリアマップで5Gのエリアと表示されている場合でも、端末と基地局が遠い場合や端末と基地局の間に遮蔽物があれば、信号強度や信号品質が低下して通信速度は第4世代移動通信システム(4G)より少し速い程度もしくは5Gを利用できなくなることも少なくない。
5Gの周波数はサブ6GHz帯の3.7GHz帯およびミリ波(mmWave)の28GHz帯を使用している。
5Gの無線方式はNR方式を採用しており、NR Bandは3.7GHz帯がFR1のn77、28GHz帯がFR2のn257となる。
iPhone 12 Proはn257に非対応で、Rakuten Mobileの5Gではn77を利用できることになるが、3.7GHz帯でも従来の4Gで一般的な周波数より高い周波数となるため、到達距離が短い。
さらに基地局を構成する3.7GHz帯のアンテナ一体型無線装置は低出力で、3.7GHz帯は固定衛星通信と共用しているため、干渉検討を経て既存免許人に影響を与えないよう整備する必要がある。
周波数特性や様々な事情を考慮すると、超高速通信を利用できる5Gのエリアが限定的であることは仕方ないと言える。
5Gで通信速度が遅い場合、実際は5Gのエリアではない、または4GのLTE方式の通信速度が影響していることもある。
5Gのエリアに関しては5Gのエリアでない場合もアンテナピクトが5G表示となる事象に注意しなければならない。
NR方式の無線アクセスネットワーク(RAN)構成はノンスタンドアローン(NSA)構成のOption 3で運用している。
Option 3ではコアネットワークは4G向けのEPCを使用し、LTE方式を提供する基地局であるeNBがマスター、NR方式を提供する基地局であるen-gNBがセカンダリとして機能するため、LTE方式に常時接続する必要があり、常時接続するLTE方式がアンカーバンドと呼称される。
アンカーバンドとして機能するために必須ではないが、アンカーバンドとして機能するLTE方式のSIB2にはupperLayerIndication-r15が設定されることが多く、それをeLTE方式と呼称する場合がある。
Option 3では待機時はLTE方式に接続し、通信時にE-UTRA-NRデュアルコネクティビティ(EN-DC)が動作してLTE方式とNR方式で同時通信する仕様となるため、待機時のLTE方式がいわゆるeLTE方式であれば端末の画面に表示するアンテナピクトは5G表示となる。
通信時にNR方式を利用できる場合は5G表示を維持し、通信時にNR方式を利用できない場合は4G+表示も含めた4G表示へ切り替わる。
明らかに5Gのエリアではない場所でも通信時に4G表示へ切り替わるタイミングが遅く、しばらく5G表示を維持する場面にもしばしば遭遇しており、5G表示でも通信速度が遅い場合はNR方式で通信できていないことがあるため、超高速通信を利用したい場合は利用場所の見直しが必要である。
アンカーバンドとして機能するLTE方式のエリアはNR方式のエリアより広いため、5Gのエリアではない場所でも5G表示となる事象は少なくない状況で、待機時に5G表示となるエリアは5Gを利用できる可能性があるエリアと認識しておくことが無難と考えている。
アンテナピクトの表示形式は国や地域または移動体通信事業者によって異なる状況で、Rakuten Mobileを含めて日本の移動体通信事業者が正規に取り扱う端末では一部の例外を除いて基本的に共通化されており、Option 3の仕様を考慮すると仕方ない。
また、EN-DCはLTE方式とNR方式で同時通信するため、LTE方式の通信速度もいわゆる5Gの通信速度に影響する。
Rakuten Mobileが運用するLTE方式は1.7GHz帯の周波数を使用しており、LTE BandはBand 3となるため、Rakuten Mobileが運用するEN-DCの組み合わせのうち、iPhone 12 Proで利用できる唯一のEN-DCの組み合わせはDC_3A_n77Aとなる。
n77の帯域幅は100MHz幅であるが、Band 3は帯域幅が5MHz幅*2のエリアと20MHz幅*2のエリアが存在するほか、市街地では混雑している場合もある。
当然、Band 3の帯域幅が狭い場合や混雑時は通信速度が低速化する。
そのため、LTE方式も含めて通信環境が大変良好な限られた5Gのエリアであれば実測でも通信速度は1Gbpsを超えることがあるが、すべての5Gのエリアがそうとは限らないと認識しておきたい。
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