セルビアのTelekom Srbijaがコソボの携帯電話市場に参入か
- 2016年10月08日
- 海外携帯電話
セルビアの携帯電話事業者であるTelekom Srbija a.d., Beogradはコソボの携帯電話市場に新規参入する見通しであることがセルビアメディアの報道で分かった。
欧州連合(EU)への加盟を目指すセルビアは、欧州連合より加盟の条件としてコソボ問題の解決を求められており、欧州連合の仲介によりセルビア政府とコソボ政府は関係改善や電気通信分野における協力などで合意に達した。
合意内容にはセルビアがコソボに対して独自の国際電話番号の運用を認めることや、コソボでセルビアの企業が携帯電話事業への参入を認めることなどが含まれている。
ただ、これには政治的に大きな問題がある。
Telekom Srbija a.d., Beogradの筆頭株主はセルビア政府で、株式保有比率はセルビア政府が58.11%、Telekom Srbija a.d., Beogradが20%、セルビア国民が14.95%、Telekom Srbija a.d., Beogradの元従業員および現従業員が6.94%となっており、セルビア政府が意思決定権を有する。
セルビア政府としてはコソボの独立を認めない立場で、コソボをセルビアのコソボ・メトヒヤ自治州として領有権を主張している。
コソボはセルビアの一部とするセルビア政府の主張も影響し、コソボの一部領域ではセルビアの携帯電話事業者が携帯電話サービスを提供しており、コソボ政府の立場としては不法との見解を示している。
コソボ政府としてはセルビア企業に携帯電話事業への新規参入を認めることで、独自の国際電話番号を円滑に取得するだけではなく、セルビア企業による不法な携帯電話サービスを排除する狙いもある。
当然ながらコソボ政府はコソボの法律に基づいて事業権を付与し、コソボの法律に基づいて携帯電話事業を手掛けるよう求めているが、コソボの法律に基づいて事業権を取得することはコソボ政府による実効支配を認めることになり、それはセルビア政府の主張とは相反するものである。
したがって、セルビア政府が意思決定権を有するTelekom Srbija a.d., Beogradがコソボの法律に基づいて事業権を取得することになれば、セルビア政府の主張に矛盾が生じる。
これは単なる携帯電話業界だけの問題ではなく、国家間の政治的に極めて重要な問題である。
コソボが独自の国際電話番号を運用開始するスケジュールが当初の計画より大幅に遅れているが、このような政治的な問題が背景にある。
ただ、欧州連合はセルビア政府に対して圧力をかけており、セルビア政府は欧州連合への加盟を最優先として譲歩する可能性が高い。
Telekom Srbija a.d., Beogradはセルビア以外に近隣諸国でも携帯電話事業を手掛けており、モンテネグロでは子会社のMTEL d.o.o. Podgoricaを通じて、ボスニア・ヘルツェゴビナではMtel a.d. Banja Lukaを通じて携帯電話事業に参入済みである。
なお、Telekom Srbija a.d., BeogradはMTEL d.o.o. Podgoricaの株式51%、Mtel a.d. Banja Lukaの株式65%を保有している。
コソボでもモンテネグロやボスニア・ヘルツェゴビナと同様に子会社を通じて携帯電話事業を手掛けると予想される。
すでにコソボではTelekom Srbija a.d., Beogradが全額出資子会社のmts d.o.o. Kosovska Mitrovicaを設立済みであり、mts d.o.o. Kosovska Mitrovicaを通じてコソボの携帯電話市場に参入するとの見方が出ている。
もし、Telekom Srbija a.d., Beogradがコソボの法律に基づいてコソボで携帯電話事業を開始することになれば、それはセルビアとコソボにとって歴史的な出来事となるだろう。
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