北朝鮮のkoryolink、携帯電話サービスの開始から10周年
- 2018年12月15日
- DPRK
朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の移動体通信事業者(MNO)である「CHEO Technology JV Company (逓オ技術合作会社)」は移動体通信サービスの商用化から10周年の節目を迎えた。
CHEO Technology JV CompanyはエジプトのOrascom Telecom Holding (OTH、当時)と北朝鮮のKorea Posts and Telecommunications Corporation (朝鮮逓信会社:KPTC)が共同で出資し、朝鮮民主主義人民共和国外国人投資法で定義された合作会社として2007年5月に設立された。
当時の出資比率はOrascom Telecom Holdingが75%、Korea Posts and Telecommunications Corporationが25%となる。
なお、Korea Posts and Telecommunications Corporationは北朝鮮の政府機関で電気通信分野の規制を担う逓信省(Ministry of Posts and Telecommunications:MPT)が全額出資する国営企業である。
CHEO Technology JV Companyの設立に伴い北朝鮮の首都・平壌直轄市に位置する普通江ホテル内の事務所を登記上の本店所在地としてCHEO Technology JV Companyの事務所を開設し、CHEO Technology JV Companyは2008年1月24日に逓信省と「WCDMA 移動通信奉仕提供及び運営許可合意書」を締結してW-CDMA方式の免許を取得した。
そして、2008年12月15日に人民文化宮殿で記者会見を開き、同日にはCHEO Technology JV Companyの中心的な拠点で本社機能が入る国際通信局(INTERNATIONAL COMMUNICATION CENTRE)で記念式典も開催し、ブランド名を「koryolink (高麗網)」として移動体通信サービスを商用化している。
なお、国際通信局にはCHEO Technology JV Companyの直営で事実上の旗艦店となるkoryolinkの小売店が入る。
CHEO Technology JV Companyは北朝鮮で初めて第3世代移動通信システム(3G)を導入しており、W-CDMA方式の2.1GHz帯(Band I)を運用する。
ロゴは北朝鮮で社会主義国家建設の象徴とされる千里馬をモチーフとし、スローガンを「もっと高く もっと速く!」と定めている。
2013年初めからは短期滞在の外国人に対してもSIMカードの販売を開始したため、筆者は同年に平壌直轄市を訪問してCHEO Technology JV CompanyのSIMカードを購入して同社の移動体通信サービスを試した。
Orascom Telecom Holdingはオランダに本社機能を置く英領バミューダ諸島のVimpelCom (当時)に買収されたが、CHEO Technology JV Companyなどは買収対象の資産に含まれず、VimpelComが取得しない資産は一時的なVimpelComの所有を経て新設されたエジプトのOrascom Telecom Media and Technology Holding (OTMT、当時)に移管された。
Orascom Telecom Media and Technology Holdingは2015年第3四半期にCHEO Technology JV Companyの位置付けを連結子会社から関連会社に変更して投資を継続している。
2018年12月15日時点でOrascom Telecom HoldingはGlobal Telecom Holding、VimpelComはVEON、Orascom Telecom Media and Technology HoldingはOrascom Investment Holding (OIH)と社名を変えており、CHEO Technology JV Companyへの出資比率はOrascom Investment Holdingが75%、残りの25%は引き続きKorea Posts and Telecommunications Corporationとなっている。
国際連合安全保障理事会で採択された決議によって北朝鮮における合弁事業などは一部の事業を除いて認められていないが、Orascom Investment Holdingは禁止の免除を受けているため、正常にCHEO Technology JV Companyに係る事業を継続できる。
北朝鮮では撤退済みも含めて複数の企業が移動体通信サービスを提供した実績を有するが、移動体通信サービスの継続期間はCHEO Technology JV Companyが最長でその期間を更新している。
10週年の記念を心より熱烈に祝福したい。
축하합니다!
■関連記事
北朝鮮のkoryolink旗艦店でスマートフォンArirang AS1201 (아리랑AS1201)を購入
北朝鮮の携帯電話事業者koryolink、国連が事業継続を承認
コメントを残す
コメントを投稿するにはログインしてください。