ベトナム・ハノイ市滞在中は軍隊工業通信グループのViettel V8802が案外と活躍した
- 2019年04月30日
- Report
ベトナムの首都・ハノイ市を訪問して同国のViettel Group (軍隊工業通信グループ)の従属会計単位で同国の移動体通信事業者(MNO)であるViettel Telecom Corporation – Branch of Viettel Group (以下、Viettel Telecom)が販売するスマートフォン「Viettel V8802」を購入した。
ハノイ市に滞在中は外出時を中心にViettel V8802をメインで使用してみた。
事前に得ていた情報によると、ベトナムでは日本人やiPhoneが狙われやすいという。
また、韓国のSamsung Electronics (サムスン電子)はベトナムで存在感が高く、ベトナムのスマートフォン市場ではSamsung Electronicsが圧倒的な強さで1位の地位を固めている。
筆者は主にApple iPhone XSおよびSamsung Galaxy S10eを使用するが、いずれもベトナムでは価値のあるスマートフォンとしてそれなりに認知度が高いと思われる。
参考までに在ベトナム日本国大使館によると、ハノイ市では日本人の携帯電話や所持品を狙ったと思われる被害が複数発生しているという。
2019年4月だけで2019年4月16日までに3件も発生しており、どうやら筆者が搭乗した航空機がハノイ市のノイバイ国際空港(HAN)に着陸した頃にも日本人を狙ったと思われる事案が発生した模様で、在ベトナム日本国大使館から注意喚起が配信された。
そのため、ハノイ市で外出時は安価なViettel V8802をメインで使うことにした。
Viettel V8802の価格は付加価値税込で2,680,000ベトナムドン(約13,000円)と安価であり、高価格帯のスマートフォンと比べて狙われる確率は低そうで、仮に被害に遭ってもダメージは軽い。
ハノイ市では交通手段として徒歩、Grab Bike、路線バスのみを使用したが、基本的に移動中はGrabと地図のアプリケーションのみを利用するため、基本的にはこれらのアプリケーションをViettel V8802で使った。
Viettel V8802はチップセットがQualcomm Snapdragon 430 Mobile Platform (MSM8937)で、システムメモリの容量は2GBとスペックは抑えられている。
Viettel TelecomとしてはViettel V8802を投入して農村部など経済的に余裕がない層にもスマートフォンを普及させる目的があり、価格相応のスペックであることを承知の上で購入したためスペックは問題ない。
先代機種のViettel V8801より価格が上昇したため一概に比較はできないが、先代機種からは性能が強化されており、特に高い性能が要求されるような機能を使わないならば、十分に実用的に使えるよう仕上げられた。
ディスプレイは先代機種の約5.0インチから約5.7インチとなり、小さすぎず大きすぎない適したサイズで、さらに屋外での視認性も向上した。
価格を考慮するとGrabや地図であれば直射日光下でも十分に満足できるレベルで使うことができた。
また、Grab Bikeで移動中の写真撮影、Chromeで簡単な調べもの、カフェなどでのテザリング機能もViettel V8802に任せた。
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Viettel V8802で撮影したViettel Groupの施設
Viettel V8820はViettel TelecomのLTEサービスに対応しており、周波数はViettel Telecomが採用するLTE (FDD)方式の1.8GHz帯(Band 3)のみ利用できる。
Viettel TelecomはLTE (FDD)方式の2.1GHz帯(Band 1)も順次導入するが、2019年4月半ばの訪問時点でハノイ市ではBand 1をほとんど導入していない模様で、ハノイ市ではBand 1に対応したスマートフォンでもBand 1の運用は確認できなかった。
Band 3でカバーされたエリアのうち高トラヒックエリアを中心にBand 1を導入する計画であり、少なくとも筆者が利用した時点ではViettel V8802でViettel TelecomのすべてのLTEサービスのエリアにおいて利用できると考えて差し支えない。
また、Band 3は帯域幅を15MHz幅*2から20MHz幅*2に拡張する計画であるが、訪問時点では15MHz幅*2のままであり、理論値はApple iPhone XSやSamsung Galaxy S10eと同じく下り最大112.5Mbps/上り最大37.5Mbpsで、実測値でもApple iPhone XSとSamsung Galaxy S10eと大きく変わらず快適にLTEサービスを利用できた。
低価格帯のスマートフォンではあるが、充電端子が表裏の区別が不要なUSB Type-Cである点は嬉しい。
未だに中価格帯でmicroUSBを採用するメーカーも存在するが、この点はViettel Telecomを見習ってほしい。
Viettel V8802は電池パックの容量が3500mAhで、Apple iPhone XSやSamsung Galaxy S10eよりも大容量であり、1日中使用しても電池切れになることはなかった。
ロック関連に不具合がある点は不満で、PINを入力後にフリーズする事象や、指紋登録が正常に進まない事象があり、これらはスペックとは関係なくソフトウェアの問題と思われる。
Viettel Groupはベトナム人民軍を統括するベトナムの国防省(Ministry of National Defence:MOD)が完全所有し、ベトナム共産党中央軍事委員会(Central Military Commission of the Communist Party of Vietnam)の指導に基づいて運営する国営企業である。
ベトナム政府の政令では国防省が命じた政治的、軍事的、その他の特別な業務を遂行する義務があると定められており、Viettel Groupとその従属会計単位や子会社の意思決定の背後にはベトナム政府の指示が存在する特殊な存在で、それだけに安価でも完成度はもう少し高めなければならないと感じた。
ほかにViettel V8802の独自の特徴を紹介しておくと、SIMロックがかけられており、シングルSIMで利用時はViettel TelecomまたはViettel Group系列の外国の移動体通信事業者のSIMカードを利用しなければならない。
ベトナム国内においてシングルSIMで利用する場合は、Viettel Telecomまたは国際ローミングでViettel Group系列の移動体通信事業者のSIMカードを使う必要がある。
デュアルSIMで利用する場合は、少なくとも片方は有効なViettel TelecomもしくはViettel Group系列の移動体通信事業者のSIMカードを使う必要がある。
デュアルSIMではデータ通信の利用をViettel TelecomやViettel Group系列の移動体通信事業者以外のSIMカードに設定できるが、その場合は通信方式がGSM方式に限られる。
そのため、国際ローミングを除くとベトナム国内で実用的に利用できるSIMカードは実質的にViettel TelecomのSIMカードのみに限られ、Viettel Telecom以外の移動体通信事業者のSIMカードを利用する場合は十分に注意したい。
Viettel Group独自のアプリケーションとしてはBankplus、Keeng、My Viettelがプリインストールされている。
BankplusはViettel Telecomが提供するモバイルバンキングサービスで、KeengはViettel Groupの従属会計単位であるViettel Media Companyが提供する音楽および動画の配信サービスとなり、My Viettelは加入プラン、データ通信容量の残量、有効期間などViettel Telecomの契約情報を確認および管理できるアプリケーションである。
壁紙にはベトナムを象徴するハスの花やベトナムの風景の写真などが含まれており、多少はベトナム感を漂わせていた。
移動中はViettel V8802をメインで使うことで、Apple iPhone XSやSamsung Galaxy S10eの電池を節約できた。
標準セットには無色透明のケースが同梱されており、外出中に財布を頻繁に出し入れすると紛失や狙われる恐れがあるため、Grab Bikeや路線バスの乗車時はクリアケースの中に挟んだ少額の現金から支払うよう細心の注意を払った。
Viettel V8802は安価なためあまり期待していなかったが、外出時は安心して使えて想定以上に活躍してくれた。
製品としての完成度は決して高くなく、最初は使い捨てのような気持ちでViettel V8802を購入したが、使っているうちに旅のお共として愛着が湧いて気に入ってしまった。
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