NTTドコモの5Gプレサービス用スマホSony J8010を紹介
- 2019年09月27日
- docomo-SONY, Report
NTT DOCOMOは第5世代移動通信システム(5G)の商用サービスの開始に先立ち5Gプレサービスを開始した。
5Gプレサービス向け端末としてSonyの完全子会社であるSony Mobile Communications、韓国のLG Electronics、韓国のSamsung Electronics (サムスン電子)が開発したスマートフォン、SHARPが開発した据置型無線LANルータが用意される。
2019年9月20日に開催された5Gプレサービス ローンチセレモニーで5Gプレサービス向け端末を触る機会を得たので、Sony Mobile Communicationsが開発したスマートフォン「J8010」を紹介する。
先に5Gプレサービスに関する概要をすると、5Gプレサービスでは標準化団体の3GPP (3rd Generation Partnership Project)で5Gの要求条件を満たすために規定した通信方式であるNRを導入している。
周波数はサブ6GHz帯のFR1が3.7GHz帯および4.5GHz帯、ミリ波(mmWave)のFR2が28GHz帯を使用し、NR Bandは3.7GHz帯がn78、4.5GHz帯がn79、28GHz帯がn257となる。
5Gプレサービスは商用サービスと同等の環境となり、商用サービスのNR Bandはn78、n79、n257で確定した。
なお、n78は世界的には3.5GHz帯と呼ぶことが多く、移動体通信業界では準ミリ波とミリ波を含めてFR2で定義されたNR Bandをミリ波と呼ぶことが多い。
NRにはNRが単独で動作するスタンドアローン(SA)と、NRとLTEが連携して動作するノンスタンドアローン(NSA)が規定されているが、5GプレサービスではNSAで実装しており、商用サービスでもまずはNSAを採用する。
3GPPでは構成がSAまたはNSA、コアネットワークがEPCまたは5GCなど、それぞれに応じてNRの収容に関する複数のRANアーキテクチャオプションが策定されており、NTT DOCOMOはLTEのEPCに収容するOption 3を採用する模様である。
J8010は5Gプレサービス用の試作機で、一般販売の予定はない。
OSにはAndroid 9 Pie Versionを採用し、チップセットはQualcomm Snapdragon 855 Mobile Platformを搭載する。
NRに対応する通信モデムとしてQualcomm Snapdragon X50 5G modemを組み合わせている。
NTT DOCOMOが運用するNR Bandのうち、n78、n79、n257すべてに対応している。
通信速度はFR1で下り最大2.4Gbps/上り最大107Mbps、FR2で下り最大3.2Gbps/上り最大202Mbpsとなる。
ただ、NTT DOCOMOが公表した通信速度はLTEとNRのデュアルコネクティビティ(E-UTRA-NR Dual Connectivity:EN-DC)を適用時の通信速度である。
NSAのOption 3ではLTEを提供する基地局であるeNBがマスターノード、NRのNSA向けRANでNRを提供する基地局であるen-gNBがセカンダリノードとなる。
そのため、NRの接続にはアンカーバンドと呼ばれるLTEへの常時接続が前提となり、NRとLTEの同時通信を実現する技術であるEN-DCが動作時にNRで通信できる。
本来の仕様としてNRが単体で通信することはなく、NRとLTEが同時通信することになるため、EN-DCを適用時の通信速度を公表したと思われる。
J8010は本体の下部にアンテナなどを付け足したような外観である。
試作機のような印象が強く、一般販売されているスマートフォンで共通の外観を持つスマートフォンは存在しない。
Sony Xperia 1と近い部分が多いため、Sony Xperia 1をベースにすると思われるが、Sony Xperia 1とは明らかに異なるスマートフォンである。
アスペクト比が21:9のディスプレイを搭載したSony Xperia 1でも縦長な印象であるが、J8010では下部にアンテナなどが付け足されたため、より縦長感が強い印象を受けた。
LG ElectronicsやSamsung Electronicsが5Gプレサービス向けに開発したスマートフォンは一般販売されているスマートフォンと共通の外観を持つが、特にSamsung Electronicsが開発したスマートフォンはNRに対応するために、従来の同社製のスマートフォンと比して基板の構造が刷新されたという。
これは推測となるが、LG ElectronicsやSamsung Electronicsが開発したスマートフォンは最初からNRへの対応を前提として開発されたが、Sony Mobile Communicationsが開発したスマートフォンはNRに対応しないスマートフォンをベースとするため、アンテナなどを付け足したような外観になったと思われる。
試作機のためかXperiaシリーズの製品名は付されていないが、リアパネルにはSony、NTT DOCOMO、そしてXperiaのロゴが入っていた。
認証情報などを表示するラベルを開くと、Type NumberはPM-1210-BVと確認できた。
ラベルには特定無線設備の技術基準適合証明等のマーク(以下、技適マーク)も記載されており、技適マークに併記される電気通信事業法に基づく設計認証の設計認証番号はDF190079003、電波法に基づく工事設計認証の工事設計認証番号は003-190106である。
あくまでも5Gプレサービス向けで一般販売しない試作機のためか、通信方式はNRとLTEのみに対応しており、音声通話はLTE上で行うVoLTE (Voice over LTE)のみで、電気通信事業法に基づく設計認証の設計認証番号はDFから始まる。
製造国表示はMade in Thailandとなっており、J8010はタイで製造することが分かる。
Sony Mobile Communicationsは長らく子会社で中国のBeijing SE Potevio Mobile Communications (北京索愛普天移動通信)が中国の首都・北京市で運営する工場においてスマートフォンを製造してきたが、2019年3月末をもってBeijing SE Potevio Mobile Communicationsの工場ではスマートフォンの製造を終了した。
Sonyの完全子会社でタイのSony Technology (Thailand)がタイのパトゥムターニー県の県庁所在地・ムアンパトゥムターニー郡で運営する工場でもスマートフォンの製造を開始しており、Sony Mobile Communicationsが開発した高価格帯のスマートフォンの製造は完全にSony Technology (Thailand)に切り替わった。
J8010はタイで製造することから、Sony Technology (Thailand)の工場で製造されたと考えられる。
あくまでも試作機ではあるが、タイで製造された最初のNRに対応したスマートフォンがJ8010である可能性が高い。
Sony Mobile Communicationsが将来的に投入すると思われる商用のNRに対応したスマートフォンもSony Technology (Thailand)の工場で製造される見込み。
NTT DOCOMOはNRに準拠した5Gの商用サービスを2020年春に開始する予定で、対応したスマートフォンは2020年春に発売するという。
Sony Xperia 1の後継機が登場するタイミングに近いと思われ、Sony Xperia 1の後継となるスマートフォンがNRに対応してNTT DOCOMOから登場することに期待したい。
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