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楽天モバイルが5G技術を提供するTPG Telecom、5G免許を取得できない可能性も



Rakuten Mobile (楽天モバイル)は2020年2月21日に豪州のTPG Telecom Limited (以下、TPG Telecom AU)の完全子会社でシンガポールのTPG Telecom Pte. Ltd. (以下、TPG Telecom SG)と第5世代移動通信システム(5G)技術の提供に関する基本合意書を締結したと発表した。

これにより、Rakuten MobileはTPG Telecom SGに5G技術の提供を行うが、TPG Telecom SGはそもそも5G免許を取得できない可能性があり、その背景を解説する。

シンガポールの政府機関で電気通信分野の規制を担う情報通信メディア開発庁(Info-communications Media Development Authority:IMDA)は5G免許の申請の受け付けを2020年2月17日に締め切った。

シンガポールは既存の移動体通信事業者がSingtel Mobile Singapore、StarHub Mobile、M1の3社で、TPG Telecom SGが4社目の移動体通信事業者として新規参入する計画である。

新規参入予定も含めると4社の移動体通信事業者が存在するが、5G免許の発給枠は2枠に限定されている。

情報通信メディア開発庁は複数の移動体通信事業者が共同で5G免許を申請することを認めたため、StarHub MobileとM1は1者として共同で申請したが、Singtel Mobile SingaporeとTPG Telecom SGはそれぞれ単独で申請した。

すなわち、2枠に3者が申請しており、少なくとも1者は5G免許を取得できない。

シンガポールにおける移動体通信サービスの加入件数の占有率はSingtel Mobile Singaporeのみで50%前後を占め、StarHub Mobileが27%前後、M1が23%前後となっている。

最大手のSingtel Mobile Singaporeは圧倒的に強い状況から単独で申請したが、そうではない状況のStarHub MobileとM1は競合企業と共存を図る戦略を採った。

TPG Telecom SGは移動体通信サービスを商用化しておらず、シンガポールで特に実績を残せていない状態で、Singtel Mobile SingaporeやStarHub MobileとM1の共同事業体に挑むことになる。

最大手のSingtel Mobile Singapore、協業によりSingtel Mobile Singapore並みの規模の確保を図るStarHub MobileとM1の共同事業体、実績がないTPG Telecom SG、やはりTPG Telecom SGが最も厳しそうな印象を受けるところである。

TPG Telecom SGは当初の計画から新規参入が大幅に遅れている点も厳しい。

情報通信メディア開発庁は2016年9月1日に新規参入の申請を受け付け、TPG Telecom SG、シンガポールのMyRepublic、シンガポールのairYottaの3社が申請した。

airYottaは事前審査で不合格となり、事前審査で合格したTPG Telecom SGとMyRepublicが2016年12月13日と2016年12月14日に実施された入札で競い、TPG Telecom SGが新規参入の権利を勝ち取った。

TPG Telecom SGは周波数の免許の有効期間が開始する2017年4月1日から新規参入できるが、通信網の整備に要する期間を考慮して2018年後半に商用化する方針を示していた。

しかし、2018年のうちに商用化は実現せず、2019年1月にトライアルとして無料の携帯通信サービスを開始した。

最初にトライアルに参加した回線は2019年12月21日にトライアルの期間を終了したが、それでもTPG Telecom SGは商用化に至っておらず、期間を定めずトライアルを延長している状況にある。

当初の計画から1年以上も商用化が遅れていることになる。

第4の移動体通信事業者として新規参入を計画し、当初の計画通り商用化できずに無料で携帯通信サービスを提供する点はRakuten MobileとTPG Telecom SGの共通点となっている。

このように、TPG Telecom SGは懸念点を抱えており、5G免許の取得は約束されていない。

また、TPG Telecom SGの親会社であるTPG Telecom AUも問題を抱える。

TPG Telecom AUは完全子会社で豪州のTPG Internetを通じて周波数の免許を取得し、豪州で4社目の移動体通信事業者として新規参入することが決まった。

中国のHuawei Technologies (華為技術)から基地局など通信設備を調達し、2018年4月には最初の商用の基地局を開局した。

2018年第3四半期から2018年第4四半期にはトライアルとして無料の携帯通信サービスを提供する方針を示したが、2018年8月30日には豪州で3位の移動体通信事業者であるVodafone Hutchison Australiaと合併で合意に至った。

その後、豪州政府は5Gの通信設備で中国企業の排除を決定したため、TPG InternetはHuawei Technologiesから調達した通信設備を用いて整備した通信網を5Gにアップグレードできなくなり、商業的に意味がないとして新規参入の断念を正式に発表していた。

Vodafone Hutchison Australiaと合併すれば新規に通信網を整備する必要はないため、実際は中国企業の排除よりも合併の合意が新規参入を中止した大きな要因と思われるが、とにかく単独での新規参入は諦めた。

合併も円滑には進んでおらず、2019年5月8日には豪州の競争当局が合併の計画を却下し、2019年5月24日にはTPG Telecom AUとVodafone Hutchison Australiaが豪州連邦裁判所で訴訟を提起しており、2020年2月13日にようやく豪州連邦裁判所が合併を容認する判断を示した。

TPG Telecom AUは豪州事業が計画通りに進まない状況で、優先度が高くないシンガポール事業に集中することは難しいかもしれない。



TPG Telecom AUの本社 (ニューサウスウェールズ州)

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