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米政府のファーウェイ制裁は諸刃の剣、想定できる影響は


米国の政府機関である商務省(Department of Commerce:DOC)傘下の産業安全保障局(Bureau of Industry and Security:BIS)は中国のHuawei Technologies (華為技術)とその関係会社を制裁対象に指定した。

産業安全保障局はHuawei Technologiesとその関係会社を米国原産品の輸出規制の対象となるEntity List (以下、EL)に追加しており、ELに追加された関係会社には日本法人のHuawei Technologies Japan (華為技術日本)、スマートフォンなど携帯端末を製造する中国のHuawei Machine (華為机器)、チップセットや通信モデムを開発する中国のHiSilicon Technologies (深圳市海思半導体)、台湾の総代理店として機能するXunwei Technologies (訊崴技術)など68の事業体が含まれる。

Huawei Technologiesとその関係会社に対する制裁措置(以下、本事案)で、Huawei Technologiesとその関係者にはどのような影響が生じる可能性があるのか考えてみる。

まず、ELについて簡単に理解しておく必要がある。

大量破壊兵器の拡散の懸念がある事業体、米国の国家安全保障や外交政策上の観点から利益に反する事業体などがELに指定される。

ELの指定を受けた者は、特定の米国原産品の輸出規制の対象となるが、完全な輸出禁止ではなく、すべての米国原産品が輸出規制の対象となるわけでもない。

本事案に関する複数の報道を確認すると、しばしば輸出禁止と表現する報道も見られるが、厳密には輸出許可制であり、産業安全保障局では輸出禁止の対象者を指すリストとしてELとは別にDenied Persons List (以下、DPL)が規定されている。

ELの指定を受けた者に特定の米国原産品を輸出するためには、産業安全保障局より発行されたライセンスの取得が必要となる。

ただ、ライセンスの発行は原則として拒否されるほか、輸出には再輸出も含まれており、第三国・地域の第三者を通じた再輸出、さらには国内移転も規制対象である。

したがって、実質的に特定の米国原産品は取引禁止に近い状況と言える。

参考までに、ELやDPLに指定を受けた者と取引を行うと内容によって米国政府より制裁措置を受ける可能性や顧客から避けられる場合もあるため、米国で事業を有する企業を中心に米国外の事業体でもELやDPLに指定を受けた者とは関与を避けることが多い。

米国の輸出規制は対象品目によって管轄当局が異なり、武器類は国務省(Department of State:DOS)傘下の防衛取引管理局(Directorate of Defense Trade Control:DDTC)、経済制裁対象国関連は財務省(Department of the Treasury:DOT)傘下の外国資産管理局(Office of Foreign Asset Control:OFAC)、そして軍事転用可能な民生品、いわゆるデュアルユース品とも呼ばれる二重用途物品は財務省傘下の産業安全保障局が管轄する。

産業安全保障局のELの指定を受けた者は、輸出管理規則(Export Administration Regulations:以下、EAR)の対象品目が規制対象となり、EARの対象品目には二重用途の材料や部品などの汎用品、ソフトウェア、特許などの技術が含まれている。

対象品目はさらに詳細なカテゴリ別に指定されており、それには材料、材料加工、電子、コンピュータ、通信装置、情報セキュリティ製品、センサなどが含まれるため、電気通信分野であれば影響は大きい。

ただ、米国外に所在かつ米国原産品の関与が限定的な場合、もしくは一般に入手可能なソフトウェアや技術の場合、EARの対象とはならない。

米国原産品の関与度は輸出先に応じて異なるデミニマスレベルが設定されており、米国原産品が組み込まれた本体において価値ベースで米国原産品の割合がデミニマスレベルを超過しなければEARの対象外となる。

米国に所在するHuawei Technologiesの主要な取引先としては、Google、Microsoft、Qualcomm、Intel、Broadcomやそれらの子会社などが挙げられる。

Googleが無償で提供するAndroidはオープンソースで、一般に入手可能なソフトウェアにあたるため、EARの対象にはならないと考えられる。

ただ、Googleが有償で提供するサービスやソフトウェアはEARの対象となる可能性が高い。

また、Microsoftが有償で提供するサービスやソフトウェア、Qualcomm、Intel、Broadcomが販売する半導体などの部品や技術もEARの対象となり、供給が中断される可能性がある。

米国外に所在する製品でもデミニマスレベルが一定の割合を超過すればEARの対象品目となるため、例えば日本企業や中国企業の製品でもEARの対象品目と判断されて、Huawei Technologiesとその関係会社に対する供給が不可となる場合も十分に想定できる。

Huawei Technologiesは携帯端末の開発、製造、販売など携帯端末事業、通信事業者に対する通信設備の供給やサービスの提供など運営商事業を柱とするが、EARのすべての対象品目が規制対象であるため、輸出を認めるライセンスの発行や猶予がなければ、Huawei Technologiesの事業に広範な影響を与えるだろう。

EARの対象品目に該当するかどうか、Huawei Technologiesが調達するすべての汎用品、ソフトウェア、技術を精査するには時間を要すると思われ、Huawei Technologies自身やその取引先が影響範囲をすぐに特定するのは困難であるが、影響範囲の推定にはHuawei Technologiesと事業内容がほぼ被る中国のZTE (中興通訊)の事例が参考になる。

ZTEは2016年3月にEL、2018年4月にはDPLに指定された。

ELに指定時は数度にわたり猶予期間が設定されたため、最終的には和解金の支払いとそれに伴う巨額の損失で済んだが、DPLに指定時はそれの解除まで猶予期間の設定は行われず、通信事業者に通信設備の供給が不可となり、さらに携帯端末は製造、販売、アップデートを含むサポートの提供が中断するなど、事業の全面的な中断に追い込まれたことは記憶に新しいだろう。

より具体的な影響としては、ウクライナの通信事業者がZTEから通信設備を調達できず、LTEの展開に遅れが生じて最終的に調達先をスウェーデンの企業に切り替えたり、日本の通信事業者に対する携帯端末の納入が停止する事態などが発生した。

筆者が豪州の通信事業者から購入したZTE製のスマートフォンもアップデートが停止し、その豪州の通信事業者はZTE製の携帯端末の販売を見合わせた。

本事案に関しては厳格に適用かつ救済措置が与えられなければ、最悪の場合はZTEのDPLに指定時と似たような結果をもたらす可能性も否定できないだろう。

さらにHuawei TechnologiesはZTEよりも事業規模が巨大で、金額ベースで米国企業や日本企業との関与の度合いも大きく、特定の米国企業や日本企業にとって大型顧客に数えられることも少なくない。

Huawei Technologiesとその関係会社に制裁措置を発動した結果、すでにHuawei Technologiesの取引先の企業には株価の下落も見られるが、米国企業や日本企業にもさらなる影響を与える可能性がある。

米国政府の措置はまさしく諸刃の剣と言える。

本事案が解決するならば、おそらく政治決着になるだろう。

2019年6月下旬に開催されるG20サミットに合わせて米中首脳会談が開催される見通しで、米国政府は本事案を対立が深刻化する貿易問題の交渉カードとして使い、中国政府に譲歩を迫る可能性がある。

本事案と関連して米中の動向を注視しておきたい。

なお、G20サミットは奇しくも筆者の拠点に近い大阪府大阪市で開催される。



NTT DOCOMOが発表したHUAWEI P30 Pro HW-02L

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