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携帯電話事業者からレバノンの今が見えたベイルート



これまで、数年にわたり海外で携帯電話事情を現地了解するために年に数度は海外に渡航してきたが、2020年は久しぶりに海外に渡航できない年となった。

2020年は海外で携帯電話事情を現地了解できなかったが、年始の期間にこれまで訪問した都市の中から印象的な都市やその背景を時間が許す限り執筆しようと思う。

今回はレバノンの首都・ベイルート市および周辺都市を含めたベイルート都市圏を取り上げたい。

「私は今、レバノンにいる。」

2019年12月末はこのフレーズが日本中を賑わせたが、その1週間前に筆者が滞在した国がレバノンである。

1週間前の私じゃないかと思いながら各種報道を眺めていたが、これまで日本の主要な報道機関ではあまり報道されないレバノン、そんなレバノンから帰国直後に日本でこれほどレバノンが話題になるとは、そのタイミングには驚いた。

筆者は日本で話題になる前からレバノンに注目し、最終的に渡航するまでに至ったが、その背景を紹介してみたい。

言うまでもないかもしれないが、携帯電話事情が関係している。

レバノンでは国有の携帯電話事業者が免許人となるが、その国有の携帯電話事業者は外部企業から出資を受け入れず、レバノンの政府機関で電気通信分野の規制を司る電気通信省(Ministry of Telecommunications:MoT)と管理契約を締結した外部企業が管理する形態を採用していた。

この形態は世界的にもあまり類を見ないが、管理契約を締結した企業がエジプトのOrascom Investment Holding (以下、OIH)とZainとして展開するクウェートのMobile Telecommunications Company (以下、MTC)のレバノン法人であることにも注目した。

国有の携帯電話事業者はAlfaとして展開するMobile Interim Company 1 (以下、MIC1)とtouchとして展開するMobile interim company no.2 (以下、MIC2)の2社で、OIHがMIC1、MTCがMIC2を管理することになった。

OIHは朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の携帯電話事業者でkoryolink (高麗網)として展開するCHEO Technology JV Company (逓オ技術合作会社)に出資しており、すでにkoryolinkの状況は複数回の訪朝で確認していたため、OIHが支援した携帯電話事業者としてMIC1も見ておきたかった。

また、MIC1とMIC2は第5世代移動通信システム(5G)の試験を開始しており、5Gの基地局を確認できるほか、ベイルート-ラフィク・ハリリ国際空港(BEY)では固定通信事業者のOgeroが提供する5G経由の無線LANを利用できるため、強い関心を持っていた。

このように、レバノンの携帯電話分野は見どころ満載である。

ただ、このときレバノンはすでに「レバノン危機」と言われるほど大変厳しい状況で、日本の報道機関ではあまり報道されなかったが、中東の主要な報道機関は連日報道していた。

レバノンでは2019年10月17日よりレバノン政府に対する大規模な抗議行動が起きていた。

レバノンでは携帯電話の通話料金が高止まりし、通話はWhatsAppの利用が多いため、レバノン政府はWhatsAppを含めたVoIPサービスに課税を決定したが、レバノン国民が宗派を超えてレバノン政府に立ち向かった。

レバノン国民は経済が低迷する状況でレバノン政府に対する様々な不満を抱えており、VoIPサービスの課税でついに限界に達したような状況と認識しておけば問題ない。

通話料金の高止まりも関係しているため、携帯電話事業者も抗議の対象となり、一部の店舗は営業の停止を余儀なくされた。



営業を停止したAlfaの店舗

レバノン政府は経済の低迷を受けて携帯電話事業者の従業員の給与削減を提示したが、次は携帯電話事業者の従業員が反対を表明して業務を中断するなど、携帯電話事業者も困難な立場となっていた。

レバノンでは通貨として米ドル(USD)とレバノンポンド(LBP)が一般的に通用し、携帯電話事業者は基本的に米ドルを採用してきたが、米ドル不足を受けてレバノンポンドの受け付けも開始するなど、携帯電話分野で歴史的な動きも見られた。

不安がまったくなかったと言えば正しくないが、抗議行動に近寄らなければ基本的に問題ないと判断し、携帯電話分野と大きく関連することも考慮して渡航を決定した。

こうしてベイルート都市圏を訪問することになったが、筆者が滞在中はクリスマス休暇の期間であるため、特に問題は発生しなかった。

本来なら街中が賑わう時期であるが、経済の低迷が影響してベイルート市の中心部は静まり返っていた。

クリスマス休暇明けはすぐに元の状況に戻り、結果的に一瞬の平穏が訪れたわずかな期間に訪問できたことになる。

携帯電話事業者の販売店を訪問すると、確かにレバノンポンドの利用が可能で、一部の店舗は抗議行動を受けて営業を停止するなど、レバノンの状況が鮮明に反映されており、レバノンの今を表しているように見えた。

また、MIC1、MIC2、Ogeroが運用する5Gの基地局をすべて確認できたほか、Ogeroが提供する5G経由の無線LANも利用できたため、個人的には満足度が高い滞在となった。

ベイルート都市圏では3店舗でSIMカードを購入したが、そのうち2店舗は2020年1月の抗議行動や2020年8月の大規模爆発事故を受けて営業を一時停止または終了を余儀なくされた。

思い出がある店舗の困難な状況は大変残念に感じるが、2020年のレバノンを象徴しているようにも感じた。



AlfaとtouchのSIMカード

管理契約は大幅な延期を経てMIC1およびMIC2ともに終了し、MIC1の管理権は2020年9月7日、MIC2の管理権は2020年10月30日に電気通信省が承継したため、2020年は携帯電話事業者の運用構造も大きく変わることになった。

レバノン料理は美味しいため、いつか安心して訪問できる日が来れば、またベイルート都市圏を含めてレバノンを再訪したいところである。

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