Viettel High TechのMassive MIMO無線装置、商用化の背景にベトナムの国策
ベトナムのViettel Group (軍隊工業通信グループ)の支店で同国のViettel High Technology Corporation – Branch of Viettel Group (Viettel High Tech)は第5世代移動通信システム(5G)の無線装置を商用化した。
5Gの無線装置はMassive MIMO (大規模MIMO)に対応したアンテナ一体型無線装置で、2019年から開発して2024年11月13日に商用運用を開始したが、商用化の背景にはベトナムの国策がある。
Viettel Groupはベトナムの政府機関である国防省(Ministry of National Defence:MOD)が完全所有、ベトナム共産党中央軍事委員会の指導に基づき運営する国営企業で、意思決定の背後にはベトナム政府が存在する。
ベトナム政府の政令ではViettel Groupは国防省が命じた政治的、軍事的、その他の特別な業務を遂行する義務を有すると規定しており、国営企業の中でも特別な存在で、国営企業改革の一環で民間資本の受け入れを検討時もViettel Groupは対象の国営企業から外れた。
ベトナムは2024年8月3日に就任した新たなベトナム共産党書記長のもとで対中政策に変化が生じているが、長らく中国を強く警戒するとともに近年は米国(アメリカ)と急接近して安全保障協力を深めてきた。
そのため、Viettel Groupの支店でベトナムの移動体通信事業者(MNO)であるViettel Telecom Corporation – Branch of Viettel Group (Viettel Telecom)は5Gの無線装置のベンダで中国企業の採用を見送り、北欧企業の採用を決定した。
しかし、Viettel Groupではベトナム政府の要請に応じてViettel Telecom Corporation – Branch of Viettel Groupで展開することを前提に並行して5Gの無線装置の自社開発も進めた。
商業的利益より国家安全保障を優先するViettel Groupは資金面の不安なく、あらかじめ商用展開が確約された状況で5Gの無線装置を開発できた。
ベトナムの国策色が強い極めて特殊な環境下で5Gの無線装置を開発したことが分かる。
なお、支店などの従属会計単位は本社の委任で事業を行うため、本社であるViettel Groupの委任でViettel High Technology Corporation – Branch of Viettel Groupが5Gの無線装置の開発を担当している。
5Gの無線装置の開発では米国のQualcommの完全子会社で同国のQualcomm Technologiesと協力しており、プラットフォームにはQualcomm Technologiesが提供するQualcomm QRU100 5G RAN Platformを採用した。
Viettel High Technology Corporation – Branch of Viettel Groupが開発した5Gの無線装置の商用展開はQualcomm QRU100 5G RAN Platformを採用した無線装置を商用展開する世界で最初の事例となった。
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