NTTドコモのSA構成は最大1.7Gbps、NSA構成より遅い背景を解説
- 2022年01月04日
- docomo-総合
NTT DOCOMOは第5世代移動通信システム(5G)の無線方式であるNR方式の無線アクセスネットワーク(RAN)構成としてスタンドアローン(SA)構成を導入した。
通信速度の理論値は第4世代移動通信システム(4G)の無線方式であるLTE方式と連携して動作するノンスタンドアローン(NSA)構成では下り最大4.2Gbpsであるが、SA構成では下り最大1.7Gbpsとなる。
SA構成はNSA構成と比較して理論値が遅くなるが、その背景を解説したい。
NSA構成はOption 3xで運用しているため、コアネットワークは4G向けのEPCで、アンカーバンドとして機能するLTE方式への常時接続が必須となる。
待機時はアンカーバンドのLTE方式に接続し、データ通信時にE-UTRA-NRデュアルコネクティビティ(EN-DC)を適用してLTE方式にNR方式も加えて同時通信することになる。
下り最大4.2Gbpsを実現するEN-DCの組み合わせはDC_1A-3A_n78A-n79Aである。
1搬送波あたりの理論値はLTE方式の1と3がそれぞれ下り最大400Mbps、NR方式のn78とn79がそれぞれ下り最大1.7Gbpsで、すべての搬送波を合計した下り最大4.2GbpsがEN-DCを適用時の理論値となる。
なお、1と3は帯域幅が20MHz幅、n78とn79は帯域幅が100MHz幅で、いずれも4×4 MIMOおよび256QAMを適用時に表記の理論値となることに留意しておきたい。
一方、SA構成はOption 2で運用しており、コアネットワークは5G向けの5GCで、FR1の周波数として定義されたn78とn79が単独で動作する。
LTE方式のアンカーバンドが不要であるため、単純にn78またはn79の理論値である下り最大1.7GbpsがSA構成の5Gの理論値となる。
NSA構成ではn78とn79のキャリアアグリゲーション(CA)を実装したほか、LTE方式も同時通信するため、理論値はSA構成より高速となっている。
ただ、NTT DOCOMOではEN-DCを適用時はLTE方式よりNR方式で多くのデータを伝送する傾向で、FR1のCAはn78とn79が同時に存在する必要があるが、n79を中心に整備を進めているため、n78が存在しない5Gのエリアも少なくない。
そのため、FR1の実測値としてはNSA構成でCAを適用していない状態とSA構成では大差は生じないと思われる。
5Gの特徴は超高速大容量(eMBB)に限らず、高信頼低遅延(URLLC)や多数同時接続(mMTC)の実現も期待されている。
Option 3xでは広い帯域幅を使用して超高速大容量を早期に実現できるが、高信頼低遅延や多数同時接続の実現は困難で、Option 2で実現が可能となる。
理論値は遅くなるが、Option 2はOption 3xより5Gを活用する機会を拡大できる。
将来的にはOption 2でもCAを導入し、通信速度を順次高速化すると思われる。
また、一部の移動体通信事業者(MNO)はNSA構成のOption 4の導入を検討していることが分かっている。
Option 4はコアネットワークが5GCで、NR方式がアンカーバンドとして機能し、NR-E-UTRAデュアルコネクティビティ(NE-DC)を適用してLTE方式と同時通信する。
Option 4はOption 2で実現できる5Gの特徴を維持してEN-DCを適用時と同等の理論値を期待できるため、一部の移動体通信事業者が導入に向けた検討を進めている。
少なくとも韓国の移動体通信事業者であるSK Telecomが検討している。
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