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東アジアの携帯電話市場 2017年の個人的な注目点



2017年を迎えたので外国の携帯電話市場に関して、筆者が重点的に注視する東アジアの携帯電話市場における2017年の予想される動向や個人的に注視している点を紹介してみる。

気になることをすべて挙げると際限がないので、個人的に特に関心が強いことをピックアップする。

国と地域に分けて紹介するので、興味ない国や地域は読み飛ばしてもらえればと思う。

【朝鮮民主主義人民共和国】
2014年初めまではフィーチャーフォンばかりだった北朝鮮もスマートフォン時代に突入した。スマートフォンの普及期に入り、ネットを活用したサービスが増えた。ネットとはいえ、一般的なインターネットではなく国家レベルのイントラネット。情報統制下で情報通信端末は脅威になり得るが、そんな中で独自のイントラネットを普及させて情報統制を維持しつつ業界発展を図る。オンラインショッピングなど様々なサービスが登場しており、サービスがさらに多様化して独自進化を遂げることは間違いない。
携帯電話サービスの普及率は依然として低く、さらなる普及を見据えて北朝鮮における携帯電話事業に関心を示す企業は存在する。また、CHEO Technology JV Company (逓オ技術合作会社)に投資するOrascom Telecom Media and Technology Holding (OTMT)は複数の問題を抱えているが、問題解消に向けた動きも要注目。
北朝鮮向けのスマートフォンは複数の中国メーカーがハードウェアを製造しているが、ZTE (中興通訊)は米国政府に刺されたこともあり、北朝鮮向けの輸出規模は縮小必至。ZTEの規模縮小によりアジアやアフリカなど新興国向けODM事業が伸びている中国メーカー、具体的にはGionee Communication Equipment (深圳市金立通信設備)の比率が高まりそうだ。Gionee Communication Equipmentが北朝鮮向けに輸出する台数はあまり変わらないが、比率が高まると考えた方が無難。
北朝鮮では外国人による携帯電話の持ち込みが解禁されて比較的早い段階から現地の携帯電話事業者を参観するなど視察を重ねており、今ではもう見られないフィーチャーフォン時代の北朝鮮やフィーチャーフォン時代からスマートフォン時代への移り変わりも見られたことは筆者の大きな強みと考えている。これからも北朝鮮の携帯電話市場はチェックしておきたい。

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▲平壌直轄市,朝鮮民主主義人民共和国

【大韓民国】
韓国と言えばやはり5G。2018年に平昌で2018平昌冬季オリンピック大会および2018冬季パラリンピック大会が開催される韓国ではKTが2017年9月までに5Gネットワークを構築すると表明した。5Gの標準化には韓国の携帯電話事業者やメーカーが積極的に関与し、韓国政府を含めて5Gで先導する姿勢を強調している。5Gで先導する見込みの韓国は東アジアに限定せず、世界的に見ても注目しなければならない国だろう。
韓国政府は2016年に携帯電話事業者の新規参入に関する7度目の審査を実施したが、基準を満たした企業がなく新規参入の実現には至らず。新規参入の失敗が続く状況で、さすがに韓国政府も方針変更は避けられないはず。2017年は新規参入に関する動きは落ち着く見通し。
メーカーに関してはSamsung ElectronicsのSamsung Galaxy Note7はまさかと思うような出来事だったが、調査結果の発表は2017年の早い段階で発表されるはず。筆者は普段からSamsung Electronicsの機種をメインで使っており、製品の完成度はもちろんのこと周波数の確認にも便利で気に入っているため、Samsung Electronicsの機種には最も期待しており、Samsung Galaxy Note7の反省を生かしてほしい。LG Electronicsはスマートフォン事業を手掛けるMC (Mobile Communications)事業本部の赤字幅が拡大し、スマートフォン事業がLG Electronicsの足を引っ張っている。家電で稼いだカネをスマートフォンで捨てている状況にあり、これから繰り出す改善策を見守りたい。Pantechは清算の回避に成功して2016年には復活を目指して新機種を発売したが、販売台数は目標の半分未満で、2017年の初めに発売する計画としていた新機種は見送りに。Samsung Electronics以外の韓国メーカーはスマートフォン事業が非常に厳しい状況で、2017年に改善が見られなければ大きな決断も必要かもしれない。
外国メーカーの墓場とも言われる韓国で米国のAppleは地位を高めており、2017年以降にApple Storeが韓国に開設されることは決定的。一方、中国のHuawei Technologies (華為技術)は携帯電話事業者と提携した機種でも売れず、世界的に大ヒットしたHUAWEI P9ですら目を覆いたくなるような惨憺たる結果。韓国における外国メーカーはAppleを除いて厳しい状況が続きそうだが、打開策を含めて動向を注視したい。

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▲ソウル特別市,大韓民国

【中華人民共和国】
中国本土の携帯電話市場は桁違いの規模を誇る、世界最大の市場だ。携帯電話事業者は1強2弱の状況が続く。1強のChina Mobile Communications (中国移動通信)は2017年の目標を明確に発表しており、その数字も桁違いだが、やはり自信の表れか。桁違いでも達成しそうな雰囲気がChina Mobile Communicationsからは感じられる。一方、2弱のChina Telecom (中国電信)とChina United Network Communications (中国聯合網絡通信)は幹部を互いに派遣するなど提携関係を深めており、China Mobile Communicationsへの対抗策が急務。China Telecomは2017年上半期に電信800Mとして中国では初めて1GHz未満の周波数で本格的にLTEネットワークを展開する見込みで、中国における周波数関連では久しぶりに大きな動きとなる。メーカーも電信800Mに対応した機種を積極的に投入するはず。
中国には注目すべきメーカーが多いが、四半期ベースの出荷台数で世界トップ5に入ったHuawei Technologies、Guangdong OPPO Mobile Telecommunications (広東欧珀移動通信)、vivo Mobile Communication (維沃移動通信)は中国および中国国外の事業も引き続き要注目。Guangdong OPPO Mobile Telecommunicationsとvivo Mobile Communicationは追う側から追われる側となり、真価が問われる年となるはず。Xiaomi Communications (小米通訊技術)は勢いを失ったとはいえ、中国ではまだトップ5に入っており、中国以外では勢いを伸ばしている国もあるため、注目しないわけにはいかない。Xiaomi Communicationsはスマートフォンの販売で収益は見込んでおらず、ソフトウェアやサービスで収益を見込むと主張しているが、ソフトウェアやサービスは決して強力なものではなく、Xiaomi Communicationsが構築しようとするエコシステムの一角を担うスマートフォンの販売台数が落ちればソフトウェアやサービスで見込める収益も減るはず。本体の安さを前面に打ち出した展開には限界が来ており、スマートフォン事業はテコ入れが求められるだろう。2016年に最も残念と感じた企業がLe Holdings (楽視控股)だ。豊富なコンテンツはLe Holdingsの強力な武器であり、スマートフォンにコンテンツをバンドルした販売手法は一定の成果を収めて販売台数を伸ばした。スマートフォンではなくコンテンツが主軸となり、コンテンツを中心としたスマートフォンの売り方をできる数少ない企業であるが、電気自動車など無謀な事業の多角化が資金不足を招いた。また、強力な武器のひとつである動画配信関連ではスポーツ中継では不祥事があり、スマートフォン事業以外で非常に残念なことが目立った。中国メーカーのプレゼンスが比較的低いロシアや中央アジアに参入してスマートフォンとコンテンツとセットで市場開拓を目指すなど、他の中国メーカーには見られない動きも見せている。2017年も注目しておきたいが、心配な1年にもなりそうだ。
中国ではスマートフォン向けのOSシェアでYunOSがAndroidに続いて2位になる見込み。YunOSはGoogleが開発したAndroidをベースとしてAlibaba Group Holding (阿里巴巴集団控股)が開発したOSで、出荷台数ベースではiOSを抜くと思われる。Alibaba Group Holdingが資本参加するZhuhai MEIZU Technology (珠海市魅族科技)がYunOSを積極的に採用しており、Zhuhai MEIZU TechnologyがYunOSのシェア拡大に大きく貢献した。Zhuhai MEIZU Technologyは新興国への参入も積極的で、スマートフォン事業は回復傾向にあり、スマートフォンの販売シェアでは上位に入っていないが、2017年も注目したいメーカーのひとつである。
中国では経済レベルが都市ごとで大きく異なり、一口に中国とは言ってもメーカーも都市ごとで戦略が異なる場合がある。深圳市の市場を見るのは楽しいが、深圳市のような大都市だけを見て中国を理解したと勘違いしている人も多いように見受けられるので、2017年は経済レベルが低めの地方都市も訪問したいと考えている。

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▲北京市,中華人民共和国

【香港特別行政区】
香港特別行政区は概して新技術を率先して導入する携帯電話事業者が多い。東アジアには日本や韓国のように通信先進国が多く、国ではないものの電気通信分野の行政は中国本土から独立して行う香港特別行政区も通信面では先進的。CSL Mobile (香港移動通訊)、Hutchison Telecommunications Hong Kong Holdings (和記電訊香港控股)、SmarTone Mobile Communications (數碼通電訊)、China Mobile Hong Kong (中国移動香港)はいずれも新技術の導入に積極的な姿勢で、新技術の導入のほかGSM方式やW-CDMA方式からLTE方式への周波数の転用も進んでいる。香港特別行政区におけるネットワークの進化や周波数利用は注視しておきたい。
2016年12月にはマカオ特別行政区とセットで香港特別行政区を訪問しようと計画していたが、旅程の都合で香港特別行政区には寄れなかったため、優先度はあまり高くないものの可能な限り早めに香港特別行政区は訪問したいと思っている。

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▲香港特別行政区

【マカオ特別行政区】
マカオ特別行政区は2015年後半にLTEサービスが始まり、カバレッジ要件は2015年末、そして2016年末まで定められていたが、2017年は設定されていない。また、マカオ特別行政区は狭くエリア整備は十分に進んだ。LTEサービスの利用者が増えることは確実であるため、2017年はさらなる通信品質の向上に期待したい。携帯電話サービスの人口普及率は300%近いが、マカオ特別行政区の人口をはるかに上回る訪澳外国人が購入するプリペイドSIMカードが多い。プリペイドSIMカードの自動販売機が設置されるなど、短期滞在の訪澳外国人がプリペイドSIMカードを買いやすい環境が整備されているため、プリペイドSIMカードの多くは使い捨て状態で入れ替わりが激しい。プリペイドSIMカードの自動販売機でもLTEサービスに対応したプリペイドSIMカードに入れ替わっており、すでにLTE契約の割合は全体の4割に達した。2017年にはLTE契約の割合が早くも7~8割前後に達する可能性がある。携帯電話サービスの加入件数シェアではCompanhia de Telecomunicacoes de Macau (澳門電訊)が1位で、引き続きCompanhia de Telecomunicacoes de Macauが優勢な状況には変わりないだろう。
市場規模が小さいためにマカオ特別行政区で積極的なメーカーはあまり多くないが、その影響もあって中国のXiamen Meitu Mobile Technology (厦門美図移動科技)やフランスのSUGAR MOBILEは存在感がある。Xiamen Meitu Mobile TechnologyやSUGAR MOBILEのスマートフォンは量販店のみならず携帯電話事業者も取り扱っており、これからも注目しておきたいメーカーだ。
マカオ特別行政区は2016年12月に訪問したばかりであるため、次回訪問は2017年後半以降になりそうだ。

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▲マカオ特別行政区

【中華民国】
台湾では2016年に2.6GHz帯の利用が本格化したが、2017年にはGSM方式の停波という一大イベントが控えている。原則としてGSM方式を運用中のChunghwa Telecom (中華電信)、Taiwan Mobile (台湾大哥大)、Far EasTone Telecommunications (遠傳電信)がGSM方式を2017年6月30日をもってGSM方式を停波することになるが、Chunghwa Telecomは海上のみGSM方式を残す案や、Asia Pacific Telecom (亞太電信)がGSM方式を導入する案も出ている。台湾におけるGSM方式に関する動向は要注目である。また、台湾では2.1GHz帯と1.8GHz帯のライセンスが2018年末に満期を迎える。有効期限前に周波数オークションで再割当先を決めることは確実で、2017年中に周波数オークションが開催される可能性もある。2.6GHz帯のように新規に割り当てられる周波数より、利用中の周波数を回収して再割当する方が高騰する傾向にあるため、加熱しそうな周波数オークションの行方も注目しておきたい。また、2016年に利用が本格化した2.6GHz帯のうち、TD-LTE方式は始まっておらず、Far EasTone TelecommunicationsとAsia Pacific Telecomは2017年中に開始することが見込まれる。国策でWiMAX方式を推進した台湾において、WiMAX方式で利用していた周波数がついにTD-LTE方式で使われることになる。
台湾の企業としてはFoxconn Technology Group (鴻海科技集団)の動向は目が離せない。Foxconn Technology Groupの子会社であるFIH Mobile (富智康集団)がSHARPブランドのスマートフォンを開発し、Foxconn Technology Groupと密接な関係のCommtiva Technology (康法科技)が販売している。FIH Mobileは過去にSHARPと提携してSHARPブランドのスマートフォンを開発し、Commtiva Technologyを通じて販売していたが、SHARPとの提携解消後は米国のInFocusに乗り換えていた。しかし、Foxconn Technology GroupがSHARPを買収すると、再びFIH MobileがSHARPブランドのスマートフォンを開発しており、台湾でSHARPブランドのスマートフォンを販売再開してからはInFocusブランドの新機種を見送っている。InFocusのことを考えると不憫に思うが、やはりFoxconn Technology Groupとしては子会社のSHARPブランドのスマートフォンを売ろうとする狙いがあるはずで、それは経営戦略上も当然である。台湾以外に中国、タイ、マレーシア、シンガポールに拡大しており、さらにベトナムにも拡大予定である。Foxconn Technology GroupによるSHARPの買収後はスマートフォン事業にも大きな動きが見られ、FIH Mobileが開発したSHARPブランドのスマートフォンが日本に上陸する可能性もあり、またFIH Mobileが出資するスマートフォンのレンタル事業ではSHARPと提携することも決まっており、日本からも大きな関心が寄せられるだろう。
台湾はCOMPUTEX TAIPEI (台北国際電脳展)の時期に合わせて訪問しているため、2017年もそうしたいが、GSM方式の停波も見守りたい気がするところである。

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▲台北市,中華民国

【モンゴル国】
モンゴルでは最大の携帯電話事業者であるMobiComをKDDIが子会社化した。そのMobiComは2016年にLTEサービスを開始しており、Unitelもそれに続いた。残りの2社は2017年にLTEサービスを開始する可能性が高く、すでにLTEサービスを開始した携帯電話事業者はLTEサービスで新たな周波数を追加する可能性があり、モンゴルにとって2017年はLTEサービスが本格化する年となる見込み。また、MobiComの子会社であるUlusnetはWiMAX方式を2017年後半より停波する計画を発表しており、ネットワーク面では大きな動きが見られる1年となることは間違いない。
モンゴルで流通するスマートフォンは中古が多い状況にあり、メーカーの動きが活発化することはあまり期待できない。モンゴル人労働者の出稼ぎ先は韓国が最多で、その影響もあり韓国向けの中古のスマートフォンが安価で大量に流通している。2014年にはモンゴル企業が新型のスマートフォンを発売したが、このような背景から販売台数を伸ばせず、その後は新機種を投入していない。モンゴル企業のスマートフォンは個人的には期待したいが、現実的には2017年も難しい状況が続きそうだ。
モンゴルには3年近く訪問していないが、4社のLTEサービスが出揃えばまた訪問したいと考えている。モンゴルの冬は厳寒であるため、温暖な季節のうちに訪問したいところ。

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▲ウランバートル市,モンゴル国

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