北朝鮮の3GサービスはCHEOのkoryolink (高麗網)とKPTCのKANGSONG NET (強盛網)が存在
朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)を訪問し、北朝鮮における携帯電話事情について話を聞けたので紹介する。
北朝鮮では移動体通信事業者の新規参入に関する計画が出ているが、2015年9月の時点ではkoryolink (高麗網/고려망/高麗リンク/コリョリンク/고려링크)ブランドで展開するCHEO Technology JV Company (逓オ技術合作会社/체오기술합작회사)と、KANGSONG NET (強盛網/カンソンネット/강성망)ブランドで展開するKorea Posts and Telecommunications Corporation (朝鮮逓信会社/조선체신회사:KPTC)の2社が存在する。
いずれも通信方式はW-CDMA方式となっている。
前回の訪朝時はkoryolinkのネットワークには外国人用と北朝鮮国民用の2つが存在したが、今回は1つになっており、外国人や北朝鮮国民に関係なく1つのネットワークを利用している。
北朝鮮国民の間ではkoryolinkを高麗網と呼ぶことが多くなっている模様で、実際に北朝鮮で購入したスマートフォンのPyongyang2404ではネットワーク名が朝鮮語で高麗網を意味する고려망と表示されており、確かに高麗網と呼ばれていることを確認できた。
一方で、北朝鮮ではkoryolink以外にKANGSONG NETが存在しており、主に山間部をカバーしているという。
北朝鮮国民の間ではKANGSONG NETが強盛網と呼ばれており、英語での公式表記がKANGSONG NETとなる。
2012年より一部地域で試験的にKANGSONG NETの運用を開始しており、本格的な展開は2013年以降に順次開始した模様である。
KANGSONG NETはCHEO Technology JV Companyによる運用ではなく、CHEO Technology JV Companyに出資しているKorea Posts and Telecommunications Corporationが運用している。
CHEO Technology JV Companyは収益性を重視するために主要都市を中心に展開しているが、山間部でも携帯電話のネットワークが必要とされているため、そこでKorea Posts and Telecommunications Corporationが直接的に運用し、北朝鮮全体で携帯電話を利用できるよう努力しているという。
Korea Posts and Telecommunications Corporationは北朝鮮の逓信省(Ministry of Posts and Telecommunications/체신성)傘下となる国営企業で、日本語では朝鮮逓信社や朝鮮逓信会社と訳されることもある。
CHEO Technology JV Companyを通じて間接的に移動体通信事業を手掛けるだけでなく、直接的にも移動体通信事業を手掛けていることになる。
ちなみに、2人の指導員のうち1人はKANGSONG NETを把握しておらず、KANGSONG NETを知っていた筆者に対して「朝鮮の携帯電話にとても詳しいですね」と驚いていた。
一応、「朝鮮の携帯電話については日本でトップ10に入るくらい詳しいです」と返答しておいた。
koryolinkの利用者は山間部においてローミングでKANGSONG NETを利用可能としており、またKANGSONG NETのネットワークは平壌では確認できず、このように展開地域が被らないことから競合関係ではないとのことである。
北朝鮮ではCHEO Technology JV Companyの競合企業が誕生することについてCHEO Technology JV Companyの筆頭株主であるエジプトのOrascom Telecom Media and Technology Holding (オラスコム・テレコム・メディア・アンド・テクノロジー・ホールディング/오라스콤전기통신수단 및 기술주식회사:OTMT)が明らかにした。
Byolまたは별としても知られるSTAR JOINT VENTURE CO LTD (星合営会社/별합영회사)が移動体通信事業に参入する計画が知られているが、実際には新たな移動体通信事業者のネットワークは運用されておらず、料金の低廉化やスマートフォンの増加などで携帯電話市場の規模拡大を見越して新規参入の案が出ている程度に留まるようである。
この時点では主要都市でCHEO Technology JV Companyがkoryolink (高麗網)を、山間部でKorea Posts and Telecommunications CorporationがKANGSONG NET (強盛網)を運用し、この2社が補足する関係で移動体通信サービスを展開していると考えて間違いない。
参考までに、北朝鮮の携帯電話番号は10桁となり、CHEO Technology JV Companyは191番号帯で191-defghij、Korea Posts and Telecommunications Corporationは195番号帯で195-defghijが割り当てられている。
なお、CHEO Technology JV Companyは2007年5月に設立、2008年1月24日にW-CDMA方式による携帯電話事業のライセンスを取得、2008年5月にW-CDMA方式の試験に成功、2008年12月15日に商用化した。
CHEO Technology JV Companyの設立当初はエジプトのOrascom Telecom Holding (OTH)とKorea Posts and Telecommunications Corporationの合弁会社であったが、Orascom Telecom Holdingはオランダに本社機能を置く英領バミューダ諸島のVimpelComに買収されることが決まった。
しかし、VimpelComが買収するOrascom Telecom Holdingの資産にはCHEO Technology JV Companyなど複数の事業が含まれず、VimpelComに買収されない資産を承継するために2011年11月にOrascom Telecom Media and Technology Holdingを設立しており、出資比率などCHEO Technology JV Companyへの出資条件に変更なくOrascom Telecom Media and Technology HoldingがOrascom Telecom HoldingからCHEO Technology JV Companyを引き継いだ。
CHEO Technology JV Companyなどの引き継ぎは2011年12月までに完了しており、一方でOrascom Telecom Holdingは2012年第4四半期に社名をGlobal Telecom Holding (GTH)に変更した。
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koryolink Sales & Customer Service Centerの入口
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Pyongyang2404ではネットワーク名が朝鮮語で高麗網を意味する고려망と表示される
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平壌の混雑する遊園地をカバーするkoryolinkの基地局
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平壌と南浦を結ぶ道路沿い建てられたkoryolinkの基地局
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逓信省が管理するINTERNATIONAL COMMUNICATION CENTRE (国際通信局/국제통신국)のビルには逓信省のロゴを確認できる
koryolinkやKANGSONG NETなど北朝鮮の携帯電話事情に関する詳しい情報を提供し、また基地局の撮影を許可してくれた北朝鮮の各関係者に感謝したい。
問い合わせなどがあれば、paopao0128[at]gmail.comまで気軽に連絡をいただければ幸いである。 ※ [at]は@に置き換え
その他、Facebook、Instagram、Twitterにおいても北朝鮮関連の情報や写真を公開しているので、気になれば目を通していただきたい。
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