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台湾における3G業務の終了に関する注意点、3Gネットワークは停波せず



台湾では2018年12月31日に「第三代行動通信(3G)業務(以下、3G業務)」の免許が満期を迎える。

3G業務の免許には主に3G契約の電気通信役務を提供するための許可と、3G向け周波数を利用するための許可が含まれると考えて差し支えない。

台湾では移動体通信事業者(MNO)のChunghwa Telecom (以下、中華電信)、Taiwan Mobile (以下、台湾大哥大)、Far EasTone Telecommunications (以下、遠傳電信)、Taiwan Star Telecom (以下、台湾之星電信)、Asia Pacific Telecom (以下、亞太電信)が3G業務の免許を保有し、亞太電信以外の4社はW-CDMA方式、亞太電信はCDMA2000方式で3Gを導入した。

亞太電信は3G業務の免許の満期を待たず、2017年12月31日をもって3G業務の免許に基づく電気通信役務の提供を終え、同時に3Gネットワークも順次停波したが、亞太電信以外の4社は2018年12月31日をもって3G契約の電気通信役務を終了しなければならない。

亞太電信以外の4社は3G業務を終了するが、これに伴う影響を受ける回線、影響を受けない回線について解説する。

まず、W-CDMA方式の3Gネットワークが停波するのかどうかという点であるが、結論から言うと停波しない。

3G業務の免許に基づく電気通信役務、簡単に言うと3G契約の回線であれば2018年12月31日をもって電気通信役務の提供を終了する対象となるが、LTE方式を利用できる4G契約であれば引き続き4Gネットワークと3Gネットワークを利用できる。

したがって、W-CDMA方式に対応かつLTE方式に非対応の端末を利用している場合、4G契約であれば2019年1月1日以降も3Gネットワークを使える。

一方、LTE方式に対応した端末を利用している場合でも、3G契約であれば使用できなくなる。

3G業務の終了に伴う影響を受ける顧客は、利用する端末に関係なく3G契約のすべての顧客となる。

なお、2018年12月末時点の台湾におけるLTE方式の周波数は下記の通り。

中華電信:B1/B3*/B7/B8*/B46
台湾大哥大:B1/B3*/B28(B)*
遠傳電信:B1/B3*/B7/B28(A)*/B38/B46
台湾之星電信:B7/B8*
亞太電信:B8/B28(A)*/B38

B28のLower DuplexerとUpper Duplexerに関しては別記事を参照されたい。

上記の周波数には利用が限定的な周波数も含むため、2018年12月下旬時点では基本的に*印の周波数に対応してれば問題ない。

台湾の周波数に言及した記事は多いが、後から追加された周波数が反映されていない記事も多い印象である。

これまでに、台湾の政府機関で電気通信分野などの規制を担う国家通訊伝播委員会(National Communications Commission:NCC)は3回にわたり4G向け周波数オークションを実施し、そのたびにLTE方式で利用できる周波数が追加されている。

LAAも含めて完全にすべての周波数をカバーしたい場合は、台湾版のSony Xperia XZ2 PremiumまたはSony Xperia XZ3なら問題ないと思われる。

—–

以下、少し突っ込んだ話。

■なぜ3Gネットワークは停波しないのか

2Gでは「行動電話(2G)業務(以下、2G業務)」の免許が2017年6月30日に満期を迎え、それに合わせて2G業務の免許を保有していた中華電信、台湾大哥大、遠傳電信は2017年8月30日までにGSM方式の2Gネットワークを順次停波した。

ところが、3Gでは簡単に3Gネットワークを停波できない背景がある。

中華電信、台湾大哥大、遠傳電信、台湾之星電信は2Gネットワークを運用していないため、3Gネットワークを停波してしまうと、LTE方式で音声通話を実現するVoLTE (Voice over LTE)に非対応の端末では音声通話が不可となる。

依然としてVoLTEに非対応の端末は多く流通しており、それだけではなくVoLTEに加入していない顧客のほか、台湾で加入件数の約2割を占めるプリペイドプランのように4G契約でもVoLTEを使えないプランも存在する。

また、VoLTE国際ローミングは限定的であり、3Gネットワークを停波する国際ローミングの受け入れにも影響を及ぼす。

W-CDMA方式の3Gネットワークを停波すると影響があまりにも大きく、簡単に停波できないことは言うまでもない。

—–

■3Gの継続は免許上どうなのか

冒頭に述べた通り、3G業務には3G向け周波数の利用に係る許可も含まれるため、当然ながら3G向け周波数の利用も2018年12月31日をもって満期を迎える。

しかし、これに先立ち2017年10月から2017年11月にかけて、3G向け周波数の再割当を含めた周波数オークションを実施し、3Gで利用する2.1GHz帯の2019年1月1日以降の免許人が確定した。

2.1GHz帯は4G向け周波数として再割当された。

3G業務の終了前後で2.1GHz帯の保有状況は、中華電信と台湾大哥大がそれぞれ15MHz幅*2から20MHz幅*2、遠傳電信が15MHz幅*2で変わらず、台湾之星電信が10MHz幅*から5MHz幅となる。

ここで思い出してほしいことがあるが、亞太電信の4G契約は亞太電信の4Gネットワーク、そしてローミングとして利用する台湾大哥大の4Gネットワークおよび3Gネットワークを使えた。

台湾大哥大とのローミング提携について、4Gネットワークは2018年10月31日をもって終了し、3Gネットワークもいずれ終了する計画で、それに先立ちVoLTEに非対応の端末でも音声通話を使えるよう2017年前半のうちにGSM方式を導入した。

なお、台湾でついに2Gが停波と伝えた商用メディアも存在するが、これは大きな誤りである。

亞太電信は4G向け周波数でGSM方式を導入したが、このような運用は「異質網路」と呼ばれ、国家通訊伝播委員会より認められている。

したがって、中華電信、台湾大哥大、遠傳電信、台湾之星電信は4G向け2.1GHz帯で「異質網路」によって3Gネットワークを維持すると分かる。

この件は過去に台湾之星電信がヒントを与えていた。

2.1GHz帯の最低落札単位は5MHz幅*2であるが、台湾之星電信は財務上の理由などから周波数オークションは積極的でなく、2.1GHz帯の再割当では5MHz幅*2のみを落札し、この理由について3Gネットワークを維持するためと説明した。

台湾之星電信は3Gネットワークを維持する必要性を認識し、3Gネットワークを維持するために必要最低限の周波数を取得したことになる。

—–

■3G契約の電話番号はすぐに失効するのか

3G契約の加入件数は2018年11月15日時点で228,199件も残っている。

2018年12月31日をもってすぐに自動解約となるわけではなく、2018年2月10日までは110、119、112の緊急通報番号への発信は可能で、2018年2月10日より後は国際的な緊急通報番号である112のみ発信できる。

また、3G契約の電話番号は2019年6月30日まで維持されるため、すぐに電話番号が失効するわけではない。

仮想移動体通信事業者(MVNO)の3G契約も影響を受ける対象で、卸元の移動体通信事業者の3G契約と同様の対応が必要である。

契約先に関係なく3G契約が影響を受けるため、3G契約の回線を保有かつ維持したい場合、電話番号の失効前に4G契約へ変更しておく必要があり、筆者としては2018年12月31日までに手続きを完了させておくことを推奨する。



中華電信の店頭で3G業務の終了を案内

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